第3話
遊園地へと入場した私たちは入口付近の広場でたたずんでいた。にぎやかなBGMとそこそこの混み具合から聞こえる人の声。これぞ遊園地だよね。
私はコドモみたいに目を輝かせているツカサを見ながら、腕を思いっきり突き上げた
「よーし相棒。仕事を忘れて遊園地で楽しもう作戦の開始だ!」
「作戦って……デートって言いなさいよ」
「ゴミみたいなクソ仕事なんざ谷底に捨てて遊園地でヒャッハーするぜ作戦の開始だ!」
「だからデートって言いなさいよっあんた浮かれすぎ!」
やれやれと肩を落としたツカサはポケットからスマホを取り出して弄り始めた。マジかよ嘘だろ冗談だよな?
「むぅー。せっかくの彼女とのおデートなのにスマホを眺めるのは失礼だとは思わんかね? 減点っ!」
私はビシッとツカサを指さした。
「おデートってあによその言い方。ここの公式サイトを見てるのよ。結構面白そうな乗り物が多いわね」
ほら、と私にスマホを見せてきた。詳細な地図の上にどんな乗り物とか施設があるかが表示されている。うむうむ、しっかり彼女をエスコートしようとしているな! さっきの減点はなしにしてやろう。ツカサの苦手なお化け屋敷連行で許してやる。
「ちょっと見せて」
「……? はい」
私はツカサのスマホを受け取った。そのスマホを慣れた手つきで操作する。一度スリープモードにして、また画面を点ける。
「ほいほいほーいっ……おー」
「……あんた何がしたいのよ?」
「いやー。ツカサ、スマホのロックコードそのままにしてくれてるの嬉しいなーって」
私はツカサのスマホのコードなんてもうすっかり覚えてる。今朝撮ったツカサの寝顔写真もちゃんと削除されてないか確認……よしっちゃんと残してくれてるね。
「そりゃあ。あんたならスマホの中身見られても平気だし……ていうかそれがしたいがためにわざわざあたしのスマホを取ったの?」
「うん! ツカサも私のスマホ見る?」
「いいわよ。あんたのスマホって、ロックを解除した途端自分の写真が使われたホーム画面見せられるんだから。恥ずかしいのよ」
もちろんツカサも私のスマホのコードを覚えている。今朝の寝顔写真の仕返しなのか、電車の中で私がツカサに寄りかかって寝ていた時の寝顔写真が、私のスマホの中に残されていた。
「とりあえず適当に歩き回ってみようよ。時間はたっぷりあるんだし!」
「そうね」
「よーし出発ぅ!」
「あっ……うぅ……」
私が腕を離すとツカサが寂しそうな顔をした。うん。この反応も想定内だ。普段のツカサは高い身長とスタイルの良さ、勝気な性格だからかこういうかわいい反応をしたときのギャップがすごい。
私はツカサのかわいさに脳内でもだえつつ、自分の腕を伸ばした
「次はツカサの番。ほらっ」
「し、しょうがないわね」
ツカサは頬を染めて私の腕を抱きしめた。いつもしていることなのに、未だに恥ずかしがるよね。
「良い? 良いっ?」
「聞くなよ……知ってるでしょ?」
「へへへーほらいこっ!」
このままツカサを弄るのも良いけど、せっかく遊園地に来たんだから乗り物とか楽しまないとね。
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