#16 本社の始まりについて
大手ネット販売会社《ワールドルーツ》の本社だって。
おじさんが言うんだ。
◆
「っど、どういう状況なのか! 教えてももらえないのかよ?!」
「えぇーめんどいもんーまぁーまぁー行きましょうっての」
「おじさー~~んンん‼」
「くまちゃーん。おじさんの腕ぇ痛いよー」
おじさんはまだ、俺よりも身長のない少年の姿だった。
でも顔はおじさんパーツでさ、元々が童顔なのかな。
おじさんを見ていた俺におじさんも、
「おじさん。腕が本当に痛いからー」
隙間から腕を引っ張って抜きとられてしまう。
「あ! ひどい‼」
腕を組みながらおじさんが前へと俺を置いて進んで行く。
それに俺も慌ててついて行くしかないじゃないか。
「待ってってば! 置いて行かないでってば!」
おじさんは立ち止まると俺の方に顔を向けて。
手を招いた。
やっぱり、おじさんは優しい。
すごく嬉しい。
(俺。お荷物になんかなりたくない!)
そんなおじさんの役に立ちたいんだ。
俺だって拾い上げであれ社蓄になったんだ。
なった以上は会社の為に、注文した客の為に!
俺は活躍を――貢献をして給料を貰うんだっ!
◆
「てー言うのがー本社なのー分かったかー?」
おじさんが本社の説明をしてくれたのに。俺の堅い頭には、それを理解出来なかった。
苦笑交じりのおじさんの顔が俺を伺い見るのが辛い。
「だーからーさ~~」
《ワールドルーツ》は異世界文化に興味を持ったやんごとなき立場の人が。異世界である《地球》に降り立って、人間の真似をして生活し不自由を覚えた。買いたいものが買えないという難点に着眼をした。
時代はネットの始まる前だったが、会社員をしていた異世界人の彼は活用を目論んだ。さらに、時代は異世界でも職業難で。どうにか、提携も出来ないかと目論んだらしい。
まずは《地球人》から《全宇宙》を巻き込んでいくことにした。
最初に探したのは協力者と指南役の人間。大統領や首相などの重役とかは考えてはいなかったらしい。本当の一般公募をしたと聞いたときはマジですか? と聞き返したもん。でも、公募も行き詰って公園でブランコに乗っていた時に。
『――悪魔も会社に行くんですか?』
1人の幼児が話しかけてきたらしい。
それが誰だとかは聞きそびれた。
出会いからすぐに発展と展開が一気に巻き起こった。
地球上で日本が最初に支部が出来て。そこからはあっという間に支部が創られた。もちろん異世界の住民も。安定した職業に就くことが出来て。生活の糧に喜んだ。
日本支部を創設した後に異世界人は異世界での本部を創設して、今に至っている。
だから、必要な
(だから、Pを欲しがるのか。
悶々と腕を前に組みながら、足早に進むおじさんの後ろに着いて行く。異世界なのに異世界とは感じさせない空間。本当にあっちと同じな造りだし、周りを歩く容姿も人間だし。騙されている感が半端ないんですけど。
俺が警戒する中で歓声が上がった。
キャアアアア~~っっっっ‼ って。
「!?」
驚いてたじろいでしまう俺に、
「ほらー気づかれちゃったじゃないのー」
おじさんが俺に頬を膨らませると、
「はぁーまだ、時間残ってるしーイケるかなー??」
おじさんが俺の腕を掴むと。
「《重・解》」
おじさんの身体が光り出すと。
あろうことか俺の身体をお姫様抱っこをして走り出した。
「ひゃ!?」
「時間がないって言っただろう!」
異世界人らしい人たちの姿や顔も分からないほどの
俺の目も回ってしまう。
だが、ついにはおじさんも立ち止まった。
「づ、ぃたんれすか?」
呂律が回らない。
情けないと思いつつも俺は足を床につけた。かくんと膝も折れそうになるけど、そこは気合いだ。がくがくと膝を鳴らしながらおじさんの横に立った。
「おじさん、ひょっとして」
「ぅ……だってぇー改装されるとかー思わねぇじゃねぇかぁー~~」
涙で目を揺らして、泣きじゃくるおじさんを見て。
少しだけ安堵してしまうのはおじさんも人間なんだなって安心感からだ。
「20年の引きニートが意気込むからだよ? さ。案内版でも見よ」
おじさんも小さく頷いた。
と、そんな時だ。
「リョウ!?」
背中越しに荒く息吐いた声が。
おじさんの名前を呼んだ気がするけど。
俺には言語が分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます