きれいな紙に印刷して、手製の表紙をつけて綴じておきたいようなお噺。
この方の作品を読むと、小さな抽斗をそっと開けて中に入っているビー玉や舶来のリボンを見るような、または羽根の美しい異国の鳥を売る店に入ったような、そんな気持ちになる。
少女が店番をするこの店では「ポンペイの炎」や「アレクサンドリアの炎」を売っている。
その言葉だけで一晩中、頭の中に空想が踊る。
聖ゲオルギオスの炎。
作者の手で丁寧に織られた織物の上に、金刺繍のようにあしらわれたそれらの文字が夢の中で火の粉を放つ。
押し寄せる灰の波、或いは、暴虐の限りを尽くされて滅びた図書館。
カッパドキアの奇岩の大地。
短衣をまとった奴隷が松明の先にその炎をとって、時空を超え、駈けてくる。
子どもの頃、こんな童話の中の世界に住みたかった。
読後はクリスマスの後のように、少し寂しい。