シロサギ

「M社のパイロット何人か潰しちゃダメか?」

 M社先進兵器実験局の研究施設で、俺は局長と密談をしている。

 局長室はよくわからない研究機材が革のソファーや木製のアンティーク机の横に鎮座していたり紙の研究資料がスチール製の棚に乱雑に突っ込んでいるごちゃごちゃした部屋だ。応接室が研究施設に存在するからこれくらいごちゃごちゃとしていていいんだろうが。

「……データ取りに必要なら善処する。だが我が社の人材を損耗させるより先に他社人材を活用すべきだ」

 局長はマッドサイエンティストで倫理観が皆無の爺だ。自社人材を使い潰し過ぎて上から睨まれることを気にしてこう言っているだけだ。

「結局載せるのはM社の機体なわけだしよ。M社パイロットを何人か潰すのは必要だぞ。それくらいわかるよな爺さん」

 これというのは俺の後ろに立つ戦闘補助AIだ。

 そうだな。俺たちの計画を振り返ろう。俺と局長は完全自律戦闘AIの実現を目指している。具体的には巨大人型兵器G H Wの操縦を完全にAI任せにすることをゴール地点として設定している。

 俺からの報告と提案は終わったので、局長室を出る。

 リノリウムの廊下を歩いていると、主任研究員の眼鏡グラスィズが俺に絡んでくる。

「最強傭兵で不能強化人間のシロサギじゃないか?仕事で来たのか?」

 眼鏡グラスィズはマッドサイエンティストで、ハードウェア関係の研究者だ。戦闘補助AIの外装をいじる関係でも世話になっている。日本軍時代からの付き合いでもある。

「ああ。そういえば機体の方はどうなっている?」

「設計と試作機の製造は完成した。あとは生産ラインだな」

 世間話をしながら廊下を歩き、試作機の置いてある格納庫に入る。

「マスター、アレが私の自由になる身体ですか?」

 格納庫には初めて見る中量二脚の巨大人型兵器G H Wが横たわっていた。

専用武装として大型のプラズマライフルと杭打機パイルバンカーが見える。重そうな武装だな。

巨大人型兵器G H W白鷺イーグレットだ」

「俺のコールサインが機体名になるのは少し不愉快だな」

 俺の目的に必要な道具は揃いつつある。あとは生産ラインとこの機体に合わせた運用経験値か。俺の仕事も終わったか。あとは……

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