第30話 restart

そこに、黒服がやってきた。「俺の思った通りだ。起きたか。よし、そろそろ行くぞ。朝の早いうちがいい。敵の寝ている間に、倒しておくというのもありだろう。」と彼は姑息なことをシレっと言った。


「ちょっと待てよ。まだ、真夜中じゃないか。朝というより。時計見えるか?AM2時ってなっているじゃないか。もうちょっと寝かせてくれよ!」と俺は反抗した。


しかし、彼はすんなりとは受け入れなかった。「いや、それどころではない。俺の勘が正しければ、どこかで淫魔の子孫がまた、生まれた。あいつらは、世代をつないでいけばいくほど、強くなる。早め早めに、芽を摘んでいかないと、取り返しのつかないほどの強さを身に着けてしまうぞ。」と黒服は言った。


「俺にドンドン薬を打ったらいんだよそん時は。」と俺は言ったが、黒服はマジな顔で言った。「貴様!命を無駄にするな!死ぬぞ!そんな考えでは!確実に!」と。


余りの剣幕に俺はたじろいでしまい、思わず前言撤回した。「あああ、悪い悪い。ちょっと調子に乗りすぎたよ。すまねえ。」と謝った。彼はフンフンと鼻息荒くしていたのを抑え、「いや、俺の方こそ。しかし、淫魔の子孫と言うのは、そんなに頻繁に生まれるものではない。ただ、俺の勘が間違っていなければ、徐々にテンポが上がっている。これまでは、年に一度ビビッと来ていたものが、最近では月に一回、ひどい時では週に一回ほどになってきている。」と彼は言った。


「そんなに?!」と俺は驚いた。黒服を良く思っていないリナもこれには加勢して話にコメントを加えた。


「私たちと繋がって果てちゃうと、男の人は死ぬでしょう?その時に、男の人から、すべての生存エネルギーを吸って子供に与えちゃう。すると、子どもはその逞しい力ですぐ成長しちゃうの。成長した子供は、すぐ成体になってまた男を襲うから、どんどんサイクルが早くなっているってわけね。あながち間違ってないわ。」と彼女は言った。


黒服の後ろで話を聴いていた北村は呆れたような顔をしている。「男って単純。すぐ女にすり寄られたらホイホイと身を任せちゃうんだから。馬鹿ばっかり。」と愚痴ってすらいる。


俺は、なんだか罵られたような、本性を知られたような、他人事じゃないような、どんな顔をしたらいいかわからないなりに、困った顔をしていた。


「まあ、とにかく。出発だ。善は急げって言うだろ?」と黒服は言った。俺は、しぶしぶ迎合した。「仕方ないな。」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る