第28話 anemia

「大丈夫か!」と翼竜君は話しかけてくれるが、俺の身体は、貧血の時のように耳にフタをされたかのような感覚とともに気が遠くなるような視界が黄色い感じを実感し、俺は身動きがとれなかった。翼竜君はその筋肉隆々とした身体で、モーテルまで安全に運び込んでくれた。


「あら、大丈夫?どうしたの?」とリナは言って心配したが、翼竜君には貧血の経験がないようで、「さあ?なんか、敵を倒したと同時に緊張が切れたのか、プッツリと切れた糸みたいになっちゃってさあ。」とか言っている。


「おそらくだけど、頑張りすぎによるエンストかな。人って、過労の時に、急に倒れたりするのよ。」とリナは言って、俺の額に手を当てた。翼竜君は、「俺も人だけどね(笑)」と言っている。リナは、「あ、そうね。ごめんなさい。」と言っている。


「熱はないみたい。きっと、一時的なものね。」とリナは言った。


「じゃあおれ、寝込みを襲われないように、モーテルの上から見張っているよ。」と言って、上空に飛んで行った。


俺は言った。「ありがとう。貧血だったみたいだ。大分ましになった。」と。すると、リナは、「護ってくれてありがとう。無理しないでね。」と優しい言葉を発した。


「無理なんて…。いや、確かに俺は能力を酷使しすぎたところはある。それで、身体が悲鳴を上げているのかもしれないな。蓄積した疲労が、ここに来て襲って来たというわけか。人間最大の敵は、淫魔ではなく、きっと自分だな。今のうちに、休んでおくよ。」と俺は言った。


「うん。私、安静にしておいてほしいから、隣の部屋にいるね。私は大丈夫だから。」とリナは言って、その場から離れていった。


俺はしばし仮眠をとり、英気を養った。小一時間静かに寝ていると、小さな物音で目が覚めた。


とここで、黒服と北村が部屋にやってきた。「翼竜君には僕らから挨拶しておいた。少し、ワクチンを投与しすぎたのかもしれないな。もし身体の負担が重いのであれば、キャンセルワクチンがある…。」と黒服が言い出し、鞄から何かを出そうとしたので、俺は制した。「やめてくれ。俺は、もっと、強くなりたいんだ。こんなところで、能力を減らしたとて、もっと強い敵が来た時に、対応できないかもしれない。ならば、俺はドンドン投与しても、倒れない調整能力を身につけて、体調万全でバッタバタ敵を倒す最強の人間になりたいんだ。」


北村が、困った顔で、「茂木君…。」と困ったような顔をしたので、俺も困った。「おいおい、そんな顔すんなよ。俺の人生だ。俺のしたいようにするよ。」と言うと、北村は、「仕方ないね。茂木君は。」と言った。


俺は、「うん。でも、なんとかなるさ。」と言っておいた。「大丈夫だ。」と付け足しておいた。

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