第24話 shelter
「参ったな。その子は、敵の種族にとって、目障りな存在だ。俺の第六感が間違っていなければ、今後種の繁栄に役立たない命は刈り取るようになっているようだ。そういう文化を持ちつつあるその種族民たちは、生まれたてのその彼女をひそかに探している。か弱い命だ。助けてやろう。もしかして、彼女には悪いが、敵の淫魔は彼女を見くびって弱いものばかりが襲ってくるかもしれない。そしたら、倒す数を稼げるかもしれない。君の経験や特訓にもなる。」
と後ろから追いついて来ていた黒服は言った。多少むちゃくちゃな理論だが、俺はこの子を見過ごすわけにはいかないような庇護欲にかられていたので、なんとも反論できなかった。彼の言う事が真っ当だとは言い切れないが、ま、確かにな。と言う感じだった。
「もうすぐ夜になる。彼女を安全な場所へ連れて、匿おう。どうしても、放っておけない。」と黒服は言った。俺も迎合した。
淫魔になり切らないこの目の前にいる小柄な淫魔は、華奢な身体をして、黒いボブヘアに真っ白な肌をしていた。そして、痛々しいほどにやつれているように見えた。
「とりあえず、私の車に乗せるわ。大丈夫。私の車に乗って。」と北村は言った。
か弱い淫魔は、「やめてよ、私にかまわないで。」と抗ったが、空には、翼竜のような身体の敵が偵察を始めていた。おそらく、黒服の言っていることが正しければ、上空の敵はこの娘の匂いを嗅ぎつけたのだろう。人間に囲まれて、匂いがカモフラージュされているところを、見つけかねていると言った感じか。
「どうしたの。何か、忘れ物でもしたの?」と北村が聞いた。彼女は言った。「もうこの世に未練はないわ。どうせあなたたちだって、私を研究材料にするつもりでしょう。私は、そんな最期を迎えるなんてごめんよ。なんなのよ。一人じゃなくなると思っていたのに、あなたたち3人もよってたかって。」と抗うように言った。
どうも彼女は数名の男女に取り囲まれることが嫌と言う事らしい。
「じゃあ、俺とだけだったらどうかな。ほら、さっき俺だけだった時は、『守ってほしい』みたいなこと、言ってたじゃない。」と俺は言った。一人で守ることはかなりハードルが高いが(色んな意味で)、彼女がもしそれでならば心を許すのであれば、まずそこから始めることが大切だ。
「この男の人に二人は近づかないで。約束して。」と彼女は言った。北村は、何だかわがままな彼女に持て余したのか、「何よ。茂木君にばかり懐いて。でも茂木君、気をつけなさいよ。変なことしたら承知しないから!死ぬんだからね!」と半ば投げやりになって俺に当たってきた。
「当たり前だろ。何もしないよ。」と俺は言った。
彼女は俺の車に同席した。
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