第19話 Knight

対峙して睨み合い、お互いの武器を高く掲げながら、正々堂々と誓う互いは、おそらく腹のうちにセコイ考えを持っていることだろうということを気付きながらも、その状況を楽しむように含み笑いをこらえられないような表情で己の武器の重みを確かめるようにじりじりと歩みを進めていた。


攻撃は俺からしかけた。横一閃に太刀筋を描き、相手の鎧兜の上から切り付ける。これは、俺なりの挨拶であり、礼儀だ。


すると、相手は俺の剣をガッチリとそのイガイガした見た目の金属グローブで掴み、「ボキリ」と刀身を折ってきたので驚いた。いやいや、そんな戦い方昔無いでしょうが。


それを見て俺も鼻から正々堂々と戦う気はないので、他の能力を出すことに決めた。俺はバッと掌を相手に見せて降伏の様相を呈した風に見せながらも、次に言う言葉を出すタイミングをうかがっていた。


掌を見た相手の表情はニヤリと笑うかと思ったがそうではなかった。まさかの無表情で俺の指を切ろうとでも思ったのか刀をフルスイングしてきたのだ。これはまずいと思い、俺はとっさに時期尚早とか何よりも先に「待て!」と言った。すると、手先からソニックブームが出て相手が吹き飛んだ。刀の切っ先が折れ、俺の真横にブスリと落ちて地面に刺さった。俺に刺さったらどうしようかと思った。


俺はさらに畳みかけるように走り、風圧に押されながらも倒れなかったが片膝を床についている相手に向かって走り出し、シュレッダーの刃のついた全身の鎧めがけて飛び込んだ。


「馬鹿か!お前!ケガするぞ!」と敵に無暗に労わられながらも俺は、「やめろ!来い!痛い!」と言葉を組み合わせて能力をコンボさせた。


言葉を発した結果は次のようになった。俺は見ていられないのか目を瞑ってしまった相手の身体をゴースト化(やめろ!)ですり抜け、相手の後ろに立った瞬間に身体を翻して、槍を俺の手から出した。その時には手を敵の真後ろで組むようにして構え、「来い!」を発した。何が出るかはわからないが、とにかく突き破ることができないなら、発現するところに生身があったらいいだけの話だ。そして、もしそれでギコギコできないのであれば、「痛い!」の背中のブースターを使って押し切るまでだ。


「うっ」と敵の鎧武者女は言い、身体に刺さった大槍を見て、おそらく目をかっぴらいて気味悪がっているであろうそいつの背中に俺は「あばよ。」と言うことで別れ告げた。


敵の女は、前のめりに倒れこみ、槍が弛緩した身体を再び貫く音がした。気の毒なので、槍から俺は手を放し、槍を消すことによって解放してやった。


「貴様!」「おのれ!」と言って、周りの洗脳されている巫女衆がクナイやピーラーやチェインソーをもってとびかかる。それらに対して俺はめんどくさそうに拳を地面につけて、逆立ちをするように足を挙上し、そこで言った。「痛い!待て!」


その発言結果はこうである。俺の足先からブーストが出て、地面に向かって押し付けられる。しかし、次の瞬間に発した手からのソニックブームで相殺。周りにいた巫女衆は広範衝撃波によって吹き飛ばされ、灯篭や薪置きなどに突っ込んだ。


「ちょっと強すぎたかな?大丈夫?」と声を掛け、俺は、巫女衆の洗脳が解かれるであろう様子をうかがった。


「あれ、私は何を…。」などお決まりのセリフを吐いている。そうだ、彼女たちは操られていたのだ。お疲れ様である。

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