第4話 What?

俺が失神から目を覚ますと、何事も無かったかのように部屋は片付いていた。


俺は身なりを整え、部屋を出て行く。チェックアウトをしようとすると、スタッフが「もうお会計済んでますので。」と言った。俺はキツネにつままれたような思いでラブホテルを後にした。どうなっている?後払いにしたのに。


ラブホテルからしばらく歩くと、外は明け方の早朝になっていた。初夏の日昇は早く、5時くらいから薄明るい。時計はないが、おそらくそんな時間だ。


家に帰ろうと歩いていると、俺の前に真っ黒なセダンが停まり、「乗れ。」と言った。


状況がつかめないままに呆気に取られていると、気付けば車に乗せられている。俺は、とんでもない女をヤッてしまったんだろうか。俺の左右と助手席、そして運転席にはそれぞれスーツ姿の男が座っていた。


「ビジネス系のヤクザの方ですか?」と俺はおずおずと聞いた。すると、左の男がハハと笑った後、「お前、バーでチクっとしなかったか?」と言った。


俺は、心当たりがあった。女と足を絡めていた時に、延髄のあたりズドンと痛い感じがした。「ああ、なんか、ありました。」と曖昧な返事をした。左手で襟足を掻こうと体勢を捻ったら、左に座っていた男がいなくなっていた。ずっと今車は走っているのにだ。


「ハッ」と驚いていると、男は、「そのとき誰か見えたか?」と聞いた。右を見ると、男がいない。そして、助手席にも、はたまた運転席にも。


「えっなにこれ!」と俺が驚くと、男たちはまた姿を現し、右の男がこう言った。「お前があそこで見たことは、他言無用だ。言えば、お前は死ぬ。」と言うやいなや、今度は車ごと男たちは消えてなくなり、俺は一人暮らしの家の前に空気椅子で座っていた。


「えっ。何今の…。」と俺は頭を掻きながらあたりを見回した。跡形もなく消えている車と男たち。俺は、家に帰り、昨日の分の日記を書いて、ひと眠りした。

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