Nightmares

「はぁっ...はぁっ...」

蹴りの力が人間の力ではないことに気づいた。

僕は完全にカティルと化したのだろうか。


腹部を見るとかすった所から血が出ている。

あいつが身動き取れなかったのは血をかためたから...?

なら、止血にも使えるんじゃ...


しばらく止まらない勢いで出血していたが、血を硬めることで止血できた。どうやら、感覚で扱えるらしい。

そういえば、同窓会...

今何時なんだ...?

時間は15時13分

男を倒すのだけで4時間も使った。

攻撃パターンは分かりやすかったものの、姿をが見えなくなる能力は手強かった。

快楽で人を殺す...

カティルにしかない能力を使って...



フードの女もだろうか。

先輩を殺す理由は何も無いはずなのに...

途中、そんなことを考えながら家まで走っていた。

家に着くと、違和感に気付いた。

――腹を空かせているはずなのに、食欲が湧かない。

なんでだ?

ラーメンは食べていない。

不思議と、食欲が湧かない。

男との戦闘で?

だとしてもおかしい。

カティルは戦闘で腹が膨れるのか?

ニュースではそんなことは言っていなかった。

ニュースが全て正しいとは言えないが、情報が無いならそれを信じるしかない。

少し...疲れたな。

18時30分にアラームを設定して目を瞑る。

――「よぉ...高橋ィ...」

いつも通り、先輩に殺される夢だろう。

最近、痛覚が鈍くなって苦ではなくなった。

「人間の大腸ってェ...1.5メートルくらいあるらしいぜェ...?」

見たくない光景が、頭の中で浮かぶ。



僕の腹に爪を強く刺す。

皮がめくれるようになったのを確認した先輩はそこを摘み、思いっきり引っ張る。

肉が丸見えになり、そこで先輩はにやりとした。

「痛がってたのは演技かァ?」

そう言うと先輩はどこからか肉切り包丁を出し、腹に刃をいれる。

「ぁ...ぅぁ...」

インスタントの焼きそばに使う湯のような熱さが僕を襲う。

痛覚は鈍っているはずなのに、少し熱い。痛い。

腹が指で四角になぞられている感覚があるものの、熱いのが引かない。

グジュグジュ...

体の中を直接触られている。

例えると、とても冷たいものを急に食べたとき、腹が痛くなるような感覚。

目をつぶっているが、聴覚と触覚が光景を訴えかけてくる。

すると、身体が急に軽くなった。

恐らく、大腸を取り出したのだろう。

好奇心で、目を開けてしまった。

先輩の顔には血がついていて、周りにも飛び散っている。

大腸を取り出されたはずなのに、腹が痛い。

大腸だけが綺麗に外れていて、自分の大腸を目の当たりにした。


――それは、僕の身長より長く見えた。

大腸を見て微笑んでる先輩の姿

腹を見ると大腸だけが無い。

視界が急にぼやける。

「アハハ!泣いてる!泣いてる!!」

痛くないのに。辛くないのに。

早く目覚めてくれ。

早く、殺してくれ。

痛くないのに、頭が狂いそうだ。

「ぁ...ぁぁぁ...」

声が上手く出ない。

「なんだってェェェェ!?」

煽るように質問してくる。

「こ...ろ...ひt」

うるさい鈴の音が鳴り響く。

「ハッ!!」

スマホのアラームを止めて、上を眺める。

夢から覚めていて、身体は疲れているものの、眠気が無くなっている。


寝たら先輩に殺されるとわかっているのに、眠ってしまう。

人間の欲求とは、恐ろしいものだ。

夢を見る度、頭が狂っていくのを感じる...

とにかく、同窓会に行く準備をしないとな。


スーツに着替え、スマホ、鍵、財布を持ち、40分頃に家を出る。

駅前の...酔いどれ。

高くも、安くもない居酒屋で、見る度、大人数の客が多いイメージだ。

まさに同窓会にピッタリだと思う。


酔いどれに着いた。

店の前に立って他の人を待つ。

クラスメイトの顔を覚えてない僕は、話しかけられるのを待つだけだ。

時間まであと3分ある。

スマホを眺めていると、すぐ3分経った。

...

...

誰からも話しかけられない。

優成にメールをしてみた。


もう着いてるけど、優成はいるの?


――すると、すぐ返信が来た。


もう着いてるよ笑

人は誰も店に入らなかったはず。


集合って、19時だよね?

またすぐ返信が来る。


え笑18時だけど?笑

...?

怒りを抑えながら、店の中に入る。

「いらっしゃっせー!」

店員のうるさい声が頭に響く。

「さ、30人ほどの団体客来てませんか」

1クラス30人ほどだったのを思い出し、聞く。

「30人ほどの同窓会で予約していた人は来てますよー」

これだと思った。

「あ、多分それです。」

案内をしてくれると言うのでついて行った。


「お、高橋?こっちこっち!」

笑いながら言ってくるのに更に苛立ったが、我慢して同窓会を楽しむことにした。

優成の全身を見ると、首に傷があって、声は聞き覚えがあった。

まさかな。

優成は焼き鳥の皮の串のタレを4本、ビールを一緒に頼んだ。

優成が注文したものが届くと、僕も注文をした。

鶏肉の串3本3種盛り、麦茶を頼み、注文したものが5分も経たないうちに届いた。

優成は

「今日来る前に寝たんだけどさぁ...」

と、僕に何も言うことなく、クラスメイトに話をし始めた。







――「悪夢、見たんだよねェ...♪」

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