Pain

目が覚めたら周りは暗い裏路地のゴミ捨て場だった。

「イッテェ...!」

貫かれていた腹は適切に処理され一命を取り留めた。

困惑した。

最後に見たのはフードの女という記憶があるのに、なぜ生きているんだろう。

致命傷なはずなのになんで生きているんだろう。

塞がれているが、まず病院に行かないと。

何か忘れているような...




「はっ!同窓会!」

僕は急いで時間を確認する

18時57分


俺は何時間ここで倒れていたんだろう...

病院に行かないと、出血で死ぬ...

壁に手を付けながら1歩ずつ病院へ行く。

腹が死ぬほど熱くて汗が止まらない。

このまま...死ぬんかなぁ...

口は鉄の味がして、不快感がある。

こんな弱いのに、僕は本当に「カティル」なのか...?

ニュースで聞いた情報と全然違う...!

ずっと腹を抑えて壁に手を付きながら歩いている俺を不審に思ったのか、2人の警察が来る。


「君〜何歳?身分証ある?」

「すごい汗だね。どうしたの?」

どんな苦しい思いをしてるのかわからないくせに、呑気に話しかけに来る。

「すみません...病院に...行かないとなんで...」

「なんで病院に行くの?」

腹をよく見ろよ。

ああ。これだから日本の警察は無能なんだ...

立っていると、意識が朦朧としてくる。

これ...やばいやつだ...

ほんとに死ぬ...

「あの〜」

「はい?」

夏なのにフード付きの長袖を着た女が警察に話しかける。

「その人のお腹見てみてくれませんか?」

警察よりも鋭いと思った。

いや、警察がにぶすぎる。

「赤く染ってるな...もしかして...血!?」

流石に警察もわかったのか、どこかに電話をかける。


一瞬女が笑ったような気がした。

初めて見るはずなのに、既視感があった。


いや。俺が探しているやつならわざわざ人を助けない。

あいつは俺の先輩を殺した張本人なのだから。


考えていると、サイレンが鳴る。

救急車のサイレンだ。

僕は担架に乗せられ、救急車に運ばれる。

意識が朦朧としていたせいなのか、視界がプツンと消えた。





「っ...」

「よぉ...」

あぁ...

「今日も楽しもうぜェ...?」

今日もまた...

「高橋くぅん...」

先輩に、殺されるんだ。









「っぶない!!!」

僕の頭をつかみにきた先輩の手を避ける。

「っとぉ...避けられちゃったなぁ...」

死ねないんだ。先輩の仇を打つまで。

この夢の原因を作った、あいつを殺すまで。

僕は逃げない。

「先輩...やりましょうか...」

「弱虫のくせに逃げねェのかぁ??」

あなたに勝てば、悪夢に勝てば救われる気がする。

「うおおおおお!!」

「いいねェ!!!」












「うげぇっ!がはっ!うがぁっ!!」

「さっきまでの威勢はどうしたよ高橋ィ!!」

ドン!ドン!ドン!と重い音を鳴らしながら殴られる。

痛いいいい!痛ぃぃぃぃ!!!

拳を強く何度も降ろされたからか、グチャっと血肉が晒される。

肋骨は折れ、指も逆方向に折られ、足の骨も全て折れている感覚があった。

苦しい。夢から覚めない。死んでないってことか?

死にたい。死にたい。殺してくれ。

「ころして、くだ...さい...」

「えぇ!?ほっせぇ声だなぁ!!」

僕は目の中に人差し指を入れられ、たこ焼きを返すかのように目玉をグチュグチュとほじくり出される。

僕は左が見えなくなった。

「うっわ、気持ちわりぃ。」

笑いながら目玉と目を合わせる志茂田先輩

生きてた時って...こんな感じだったっけ...

すると、先輩は僕の口元に目玉を寄せ、無理やり開けて、目玉を握りつぶした。

口の中に液体の多いゼリーのようなものが入り、皮の様なものも後から口に入った。


なにも感じれない。

全身痛すぎて、痛い、ではなく、死にたいが勝っていた。

「どう?美味しいか?なぁ?」

なにも答えられない僕にムカついたのか、髪の毛を掴み、頭を殴ってくる。

ドス、ドス、

鈍い音が鳴るが、なにも感じれない。

「面白くねぇなぁァ...」

先輩は口の中に指を入れ、人じゃない力で1本ずつ歯を抜いていった。



全ての歯を抜くと、

なにも反応しない僕に嫌気をさしたのか、

「あーもういいわ。殺すか。」

次の瞬間、僕は頭を潰された。











「っ!!!」

目が覚めた。

「はぁっ...はぁっ...」

夢とは言っても、憧れの人から殺される夢は何度見ても堪えるものだ。

以前、先輩は次死んでも夢から覚めないって言ったはずなのに、なんで生きてるんだ?

汗が止まらない。涙も。






「高橋くん。こんなに短い期間で、病院2回目だよ?」

うるさい...

「はい...すみません...」

「何かあるんならさぁ...カウンセラーの方いるんだから、相談すればいいのに。」

うるさい...うるさい...

「もうね、二度と来ないようにしてね。」

うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。

「すみませんでした...」










退院してもつっかかることがある。

あれは、フードの女だったのか?

声は甲高く、口調も丁寧。

なのに、あのにやりとした顔が頭に残っている。


あっ。

同窓会のことを忘れていた。

「優成...くんは、怒ってるかな」

眠っている時にメールが来ていた。




わりぃ!同窓会、明日にするわ!

首が痛くて痛くて...ものすごい痛い笑

急に延期だけど、まじ、許して(汗)


よかった。同窓会は延期になったらしい。

明日ってことは...今日か。

同窓会に行く前に外に出るのはやめておこう。

もう、うんざりだ。

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