Meaning

そうか...僕があいつを殺せば、

元凶を殺せば、先輩に殺される夢は見なくて済むんだ。


僕は肉切り包丁をカバンの中に入れ外に出る。

東京は最近ずっと雨が降っている。

嫌なことが起きる予兆かのように。

「傘...持ってくればよかったな...」

夜には同窓会があるから、あまり時間を潰せない。

以前、先輩と僕が襲われた路地裏に行ってみた。

何事も無かったかのように行った居酒屋は開いていて、中からは楽しそうな声が聞こえる。

少し、鉄の匂いがする。

居酒屋の肉の匂いだろうか。

僕が苦しんでいるのに、他の人間は笑ってる。

そんな現状に腹が立った。

さっさとあいつも殺して、僕は救われたい...

女だ...女...

フードを被った女を走って、走って、探した。

何分経っただろうか。おかしいくらいに人がいない。

僕は気づいた。

走っても、走っても同じ風景ばかりだ。

風景が繰り返されるなんて非現実的なことが起きるのか?

おかしい...おかしい...!

朝のことを思い出した。

ニュースの専門家が最後に言っていたこと。

「血を使っt...」

これが、カティルの能力なのか?

近くにフードの女がいるのか!?

どこだ...!どこだ!!!

僕はまた走る。

でも。


「走っても...はぁっ...はぁっ...走っても...誰もいない...!」

体力が底をつく寸前だった。

夢で足はとっくに限界を迎えていて、息が切れて意識が朦朧としている。

世界が歪んでいるかのように感じる。

「はぁ...はぁ...はぁ...はぁ...」

今にも倒れそうだ。

はやく、はやくフードの女を見つけないと...

「チャリーン♪」

後ろから声がした。

振り向いても、誰もいない

「はぁ...はぁ...なんで声がするんだ...?」

「君が俺のいるところを見てないからわかんないんだよ〜♪」

周りを見ても誰もいない。人影が1つもない。

「ど!どこだ!!」

「本当きみ、感が鈍いねー♪」

後ろから声がしていると思っていた自分が間違いだった。

上からなにか落ちてくる気がした。

「どーん♪」

「っ!」

男が上から落ちてきた。

「ありゃりゃ、当たったかと思ったんにねぇ...♪」

「はぁ...はぁ...はぁ...お前は...?」

「名前?名乗るわけないじゃーん♪」

(カモ、みーっけた♪)

足がもう限界だ。

「なんで俺がいま出たと思うー?♪」

「僕を殺すためか...?」

「いやいや♪きみを殺すため「だけ」ならそのまま放置してるけど〜?♪」

急に右の大ぶりを仕掛けてくる。

反射的に腕で防ぐ

ギリ...

骨にヒビが入る音がした。

「うぁぁぁっぁぁっっ!!!」

「イヒヒ♪痛い?痛い?♪」

体力を削れるだけ削って、あとはなぶり殺すためにいま姿を現したのか...!!

「痛いよねぇ♪痛くないわけないもんねぇ♪痛いよねぇ♪」

あのとき感じた恐怖が今また感じさせられる。

怖い。怖い。怖いよ...

先輩...助けt...

「よーいしょ♪」

横腹を思いっきり蹴られる。

ボスッ

「うえぇ!!」

壁まで吹っ飛んだ。

なんだ...この力...人間じゃない...

「俺さぁ♪最近ニュースとかに流れてる、「カティル」なんよねぇ♪」

カティル...

「はぁ...はぁ...カティルは、お前に悪夢を見せたやつを殺さないと意味ないぞ...!」

「知ってるよ〜ん♪」

俺は、誰かに絶望を与えた訳でもない。なにもしてない。なんで、なんで殺されないと行けないんだ...!!!

「な...んで...はぁ...なんだ...」

「?」

「はぁ...はぁ...なんで僕を...狙う...?」

「だってさぁ...?」

僕は震えが止まらなかった。

こんなやつがいるとは思わなかったから。

こんなやつが、本当にいるなんて思ってなかったから。

「人を殺すのって気持ちぃぃぃじゃんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」

こいつ...狂ってる...本当に殺される...!!!!

僕は這いつくばって逃げようとする。

「あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!♪」

笑って歩いて追ってくる。

「そうだよ!!その醜く逃げる姿だよ!!!あぁ!!楽しい!!もっと醜い姿見せてよぉ!!!あはははははははははははははははははははははは!!!」

いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。

フードの女を殺すまで死ねない。死にたくない。

いやだ!!

死にたくない!!死にたくない!!!死にたくない!!!!!

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

「もっとその姿見せてよぉ!!!高橋くん!!!」

いやだ...!いやだ!!!いやだぁぁぁ!!!

「いやだぁぁぁ!!!!」

「面白いねぇぇぇきみぃぃぃぃ!!!」

「死にたくない!!!助けて!助けて!助けて!いやだ!死にたくない!死にたくない!死にたくない死にたくない!!!うぁぁぁぁぁ!!」

這いつくばって逃げようとしている僕を嘲笑うかのように僕の髪の毛を掴む。

「イダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイ!!!」

「うるさいよぉ!!きみぃ!!!」

地面に何度も顔を叩きつけられる。

呼吸が出来ない。

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ

「痛いよねぇ?痛いよねぇ?助けて欲しい?ねぇ!!助けて欲しい????????ねぇ!!!!」

「助けて!!助けて!!助けて!!!助けて!!!!助けて!!!!!」

「あはははははははははははははははははははははは!!!」

そのまま投げ飛ばされる。

「ぐへぇぇぇぁぁ」

摩擦で背中が焼けて痛い。

痛い。痛い。やめてよ。

「高橋...そのままでいいのか?」

「お前の後に入社してきた後輩に抜かれていいのか!」

これは...僕に後輩ができた時の...

「やられっぱなしは嫌いなんだよ!!俺は!!」

せん...ぱい...

「出来のいい後輩がなにもしないまま抜かされるなんて見たくねぇ!!」

そうだ...やり返さなきゃ...

やるんだ...いま...

死なないためにこいつを殺さないと!!

僕は立ち上がった。

カバンのジッパーを開き、肉切り包丁をとる。

「やるんだ!!ここで!!」

「こいよ!!!オラ!!こいよ!!!!」

僕は向かって走り、刺そうとする。

「オラァ!!!死に晒せぇぇ!!!」

その瞬間、あいつは右の拳に力を入れる

右の...!大振り!!

予感した僕はしゃがみ、大振りだと言うことを当てる。

「ま、不味い!!やばい!!!」

隙を見て僕は横腹に包丁を刺す

ザシュッ...




肉に入った音がした。









「ざんねーん♪」







その瞬間、腹が焼けたように熱かった。

熱い。熱い。熱い。

へそ部分を確認した。

「な...んで...」

左手でお腹を貫かれていた。

自然と口から血が出る。

あぁ...鉄の匂いが...臭い...



僕は...死ぬのか...?

いやだ...









シュッ


僕の頭に液体が当たる感覚がした。

うっ...

目の前が少し赤に染まる。

後ろを見ると...


フードの女がいた。

視界は赤いのにその瞬間





僕は目の前が真っ暗になった。

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