Cause

7時51分

目が覚めてしまった。

何回寝ても、何回寝ても、あの光景が忘れられない。

「お腹...空いたな...」

昨日コンビニで買ったものを食べる

でも、お腹はそれを拒んでしまう。

食べられない。あの光景が脳裏に浮かんで。

食べられない。先輩に申し訳なくて。

「あぁ...くそ...」

やるせない気持ちでいっぱいだった。



東京は強い雨が続いている。

何日も、何日も。

二度寝しようとするけど、窓に雨が当たる音がうるさくて寝れる環境ではない。

スマホを付け、SNSを見ていると、メールが来た。

「誰からだ...?」

会社では連絡しあう人はいないし、学校に通っていた時もこれと言って仲良くしていた人はいなかった。

優成です。久しぶり!

同窓会やろうと思うんだけど、お前もこね?w

忙しいなら来なくてもいいからな。

同窓会の日にち書いとくから来れたら来いよー!

6月28日19時30分

駅前の酔いどれ


優成...

覚えてないだけかもしれないが、誰だか分からない。

イタズラか?と思ったが疑うのも良くない。

28日は何も無い...行ってみるか。

特にすることは無いから寝ることにした。


「ん...んん...うぁ...」

「お前も...お前もこい!!お前も!!」

先輩から首を絞められる。

顔半分無い志茂田先輩から。

「お前だけ生かされるなんざおかしい...!

死ね!死ね!死ね!死ね!!」

「せんぱ...ぁぁ...い...」

意識が遠のいていく。

「や...め...」

「っはぁっ!!」

死ぬところで目が覚めた。

寝る度に志茂田先輩に殺される夢を見てしまう。

寝ても、居場所が無い。

ギュルルル...

腹の音がなった。

昨日と同じ、コンビニに飯を買いに行く。

弁当、飲み物、ホットスナック

買っても食えないんじゃ、意味無いけど。

「こんばんは」

ぇ...

前を見ると、昨日話しかけてきた糸目の店員さんだった。

「こ、こんばんは...」

「昨日、帰り道大丈夫でした?」

「は、はい。」

そりゃ、悲鳴が上がった直後に走って帰るやつなんだから心配するだろうと昨日したことを自分で恥ずかしくなった。

3つバーコードを読むだけなのにピッという音が長く感じた。

「怖いですよね。ここ。物騒な事件が起きたりねぇ。」

「そ、そうですね。」

「特に昨日の悲鳴。」

「そうですね...」

だるい。早く帰りたい。帰って飯を食べたい。

「よくこの弁当いただくんですか?」

「そ、そうなんですよ。」

「僕もよく食べますよ。美味しいですよね。」

何故こんなに絡んでくるのか、不思議で、不思議で、たまらない。

「以上3点で...」

即座に1000円を置き、急かすようにお釣りを待つ。

「こちら...」


あー。話が長かった。急に絡んでくる大阪のおばちゃんみたいだった。

...

確かに。最近物騒な事件が多い。

先輩が亡くなったこともそうだし、悲鳴の件も。

ニュースでも流れることがある。

東京って...こんな物騒だったっけ...

考えているとすぐ家に着いた。

レジ袋をベッドの横に置き、エアコンをつける。

ベッドに倒れ、仰向けになり、さっきのことをまた考える。

そういえば、明日同窓会だったな。

俺の事、覚えてくれている人はいるのだろうか。

学生時代も後悔しかなかった。

好きな子は取られる、喧嘩をして退学になりかけたり。行事もいつも失敗する。

「今と同じだな...」

ため息をつけて、自然と眠りについてしまった。


「高橋ィ...ふぅ...ふぅ...!」

志茂田先輩に追いかけられている。

先輩は包丁を持っていて、捕まれば刺されてしまう。

毎回、死ねば夢が覚めるのだが、嫌な予感がして、本能的に走る足が止まらない。

「はぁ!!はぁ!!はぁ!!はぁ!!はぁ!!」

限界だけど、走らないと。

走って逃げないと。

「待てェ...待てェ!!!ぶっ殺してやるからよぉ!!!」

狂気的に笑い、ずっと追いかけてくる。

何時間走っているだろうか、

走る足はゆるめられない。

「はぁっ!!!はぁっ!!!はぁっ!!!はぁっ!!!はぁっ!!!」

息が、出来ない。

辛い。

このまま捕まって死のうかな。

...

あ。そうだ。このまま死ねるなら死ねばいいんだ。

俺は走る足を止めようとする。

「なんでぇっっっ!!なんで止まらないんだよぉっっ!!」

「ひゃひゃひゃひゃははははは!!」

限界なのに。止まりたいのに。

足が痛い。

夢なのになぜ感覚がある?

本当に捕まったら死ぬのか?

死んでもいいから止まってくれ。頼む。頼むから!!頼むから!!!!

止まってくれ!!!

「止まってくれ!!!!!!!」

「夢は覚めねぇよぉ!!!」

!!

先輩...ここが夢だって...

「俺がお前を捕まえ、そして殺すまで夢は覚めない...だが、お前はもう目覚めることは出来ない...」

死ぬか走り続けて地獄を味わうかなのか...?

いやだ...いやだいやだいやだいやだ

「止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!覚めてくれ!覚めてくれ!覚めてくれ!覚めてくれ!覚めてくれ!覚めてくれ!覚めてくれ!」

「ははははははははははぁぁっ!!無理だっつってんだろぉがぁ!!」



「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

...

「はぁ...はぁ...はぁ...」

夢が覚めたのか...?

「次はねぇからな...高橋ィ...」


「寝ることも...許されないのか...」

違和感に気づく。

「いっっってぇぇっぇぇっっ!!!」

足が...痛い...

夢じゃなくて...現実?

数時間も本気で走り続けた弊害?

もしかして...ほんとに捕まったら死ぬんじゃ...

つけっぱなしだったニュースが目に映った。

「いまね。今起きてる事件で...目の前で誰かが死んだり、自分が死にかけてトラウマをかかえた人ね。悪夢を見ていると思うんですよ。」

俺も...該当してる...?

「そういう「嫌なことが起きて悪夢を見ている人」はねぇ...」

ゴクリ...

「「カティル」という才能を持っている人々かもしれないですね。」

カティ...ル...?

「「カティル」とはね。悪夢を見て、その悪夢を見る度、性格が変わったり、どこかが極端に強くなったりとかね。才能の塊のことなんです。」

もしかして...この「カティル」って...

「悪夢を見る度強くなりますけどね。えー、性格も変わり、価値観も変わる。つまり、乗っ取りのような感じです。」

「先生。なにか、悪夢を見なくする方法などは、あるのでしょうか。」

「えー、それはーですね。」

...

「自分にトラウマを受けた張本人を「殺す」ことです。」

ぇ...?

「武器とかも使っちゃダメでね。自分の力で、殺すんですよ。」

今なんて...?殺す...?

え...?

「さらにね。「カティル」はね。もう1つ人には出来ないことが出来るんです。

それはね。

自分の血を使っt...」

砂嵐がかかった。

「カ...ティル...?」

あのフードの女ってもしかして...

自分をカティルにしたやつが分からないから殺し歩いてるってことか...?

そんなことのために先輩は殺されたのか...?

その瞬間、頭が真っ白になった










俺のカティルは...こいつのせいだ...

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