第7話 押し寄せる感情は感動


 幻想的な世界は恋愛経験がない私でも心打たれる光景が待っていた。

 完璧なまでのメインヒロインの女心の描写。

 これは同じ女から見ても、そうそう、それある! と言いたくなるような文句なしのキャラ設定と立ち振る舞い。そのヒロインに恋した主人公の描写もまた完璧とも言える。女の私からしても男子高校生って確かにこんな感じよね、と共感できる心理描写。なにより、二人のじれったいすれ違いが実にむず痒い。早く! そこよ! そこ! 今推しなさい! とつい気づいたらその世界に入り込んで応援する私がいた。主人公のライバルやメインヒロインの親友と言った人物たちとの関係性も物語と密接していて、これここで回収? と思わず驚く展開だったり、これ伏線だったの!? と上手い感じで読者に気づかせないように表現を曖昧にしていたり、と正に私好みの恋愛小説。女心を理解し男心も理解しているそんな作品である。


 恋は理屈じゃないってよく言われるけど、この作品はまさにソレに当て嵌まる。

 些細なきっかけで急に相手を意識し始めたり、恋愛とは関係ないことが後に二人を繋ぐ思い出となったり、会えない時間が二人の距離を縮めるきっかけになったりと、ありとあらゆることが当事者たちの関係性を逐一更新していく。それらは全てプラスに作用するのではなく、時にマイナスに作用したりと、複雑な人間の心が緩急を付けながら動いていく。その度に私は「あ~、そうじゃない! そこは素直になれ、ばかぁ!」とつい思わずにはいられない。


「えっ? ちょっと、もう終わり!?」


 気付けば二十九話まで読んでいた私は圧倒的な物足りなさに心が奪われた。

 早く続きが読みたい。

 心の奥底から思った私はすぐに作品をフォローする。

 こうなると評価に迷うがこれではむず痒過ぎてしたくてもできない。

 この後の展開次第で作品の良し悪しが大きく変わる、と言った感じで。

 ヒロインを振り向かせようとする主人公。

 そんな主人公が大好きなヒロインの親友サブヒロイン。

 友情と恋愛が交差する学園生活を高いレベルで表現しているのは最早言うまでもない。それに登場人物全員が魅力的で儚い。


「次の更新は……えっと……明日かしら」


 今までの更新頻度から推測する。

 Web小説の良い所は手軽に読めるところだが、向こうはプロでお金を貰っているわけでないので更新日が不定期だったり、作者の都合で連載が途中で終わることもある。これはあくまで一例で毎日更新する作者もいれば、毎週何曜日と決めて定期的に更新をしてくれる作者もいるのは百も承知。『奇跡の空』先生は作品の更新頻度から推測するにどうやら後者よりの人らしい。

 なによりこんな風に自分好みの作品と出会った時は、お金出すから続きを早く読ませて、とつい言いたくなる。

 書籍と違って区切りが良い所まで一気読みができないのは仕方がないことだとわかっているのだが、どうしても我儘になってしまう。


「それにしてもこの後の展開とても気になるわね」


 まず作者目線で考えみる。


「…………う~ん」


 次に読者目線でも考えみる。


「…………そうね~」


 無数に枝分かれする道の中からどれを選び歩いて行くのか。

 その結果物語をどのように進めていくのか。

 それを考えた時にある答えが出てくる。


「たぶん『奇跡の空』先生の中では明確なゴールが見えていて、後はWeb小説の最大のメリットである読者の反応を見ながら完成されたプロットを必要に応じて修正していくのかしら。それに読者目線でも誤字脱字がないのはもちろん改行を上手く使うことで読みやすさを意識しているところを見て取れるとなると本当に凄い先生としか言いようがないわねWeb小説家としては」












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