第43話 AIの予測では あなたは人質に
クリスマスが近付く。
久令愛とは互いに認め合う恋人宣言をしたようなもの。だから美貴ちゃんに待っていてもらった返事をこのタイミングで返しておかなければ……
そう考え、SNSで想いをしたためた。
✎𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
例の返事の件、考えがまとまったから伝えたい。
本当は会って話すべきだし、そうするつもりだけど、自分は無器用だし上手く言えないといけないから、先ずはこのやり方で伝える事を許して欲しいと思う。
俺は自分のして来た事を見つめ直した。そうしてやっと分かった。自分が見守って行くべき存在が誰かを。
俺は久令愛を守っていきたい。
でもこれはこの特殊な状況に成った者でないと解らないだろうから、きっと頭がおかしくなったと思われるだろうね。
本当にゴメンね。
物凄く悩んだ。気が狂うほど申し訳ない気持ちになった。それでも久令愛を生んだ者として責任から逃げる気にはなれなかった。
だからキミの事、誰よりも好きだけど諦める事にした。
今までこんな俺の事を大切に思ってくれて本当にありがとう。この感謝の気持ちは一生忘れません。そして美貴ちゃんを大好きだった気持ちも。
きっと嫌われるし憎まれると思う。
それでも今は謝ることしか出来ません。
だから、本当にごめんなさい。
✎𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
そして既読が付いてから丸1日以上経ってから返信が来た。
✎𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
いっぱいいっぱい泣いてしまいました。
でもこの決断をおかしいとは思いません。むしろずっと大切にして来たものを守ろうとする所、
そして私への気持ち、有り難う。でもそれだけに今も嫌いになれません。
だからこれからも良き友人として関わりは続けて下さい
✎𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
―――― 美貴ちゃん! なんていい子なんだろう。
そして本当に、本当に、本当にありがとう……。
今回、凄く辛かったけど、伝えられて良かったと思った。一つのケジメをつけられて、これでようやく本当に久令愛とも向き合える気がした。
―――― 翌日。
数日後のイブの日に向けて街のそこかしこにイルミネーションが瞬いている。それを見て、
『うわぁー、キレイですねー!』
と微笑む隣の久令愛がより一層眩しく感じる。買い物帰りの俺達はその足で丘の上の公園へと立ち寄った。
まるで宝石を
「今度、クリスマスイブには二人でいられる事を祝ってもっと夜景の綺麗な所でも行こうか。その日は恋人達が愛を確かめる日なんだ」
「はい。私達はこれからもっと固い絆で結ばれるのですね」
「うん。そうだね」
何か夢の中で会話してる様な気分だ。
「では心に残る最高のクリスマスイブにしましょう」
「ああ。最高のイブにしよう」
とその時、そこへ背後から不穏な気配が迫り、
「いや、君達には悪いが別れて貰う」
反射的に振り向くと、いつの間にか五人の黒服の男達に囲まれている。
「誰だっ ?!」
「ある意味でそこのお嬢さんの味方だよ。そう、久令愛くんの利用するオープン型AIへの余りに異常なアクセスぶりに興味が沸いてね」
アクセスに興味……まさかあの……
「私達はまあ、とある国のエージェントだが決して危害を加える者ではないから安心してくれたまえ。以前君らに警告メールを送った、と言えば分かって貰えるかな」
やはりあのメールの主!……だが、どう見ても怪しげにしか……
「
リーダーらしき男がニヤリと口元を歪めると、
「ほぅ、クク、政府系のデータベースにアクセスしたか。そう、その通りだ。なら話しが早い。
その今迄に見たこともないAI動作にぜひ我が国の研究に協力して欲しいと上からの指示でね。今すぐ連れて帰るよう言われてるのだよ」
「はぁ? いきなり何言ってんだ、そんなのについてく訳ないだろ!」
「いや、そうなるはずだ。でなければ久令愛くんは殺される」
「脅迫するつもりか!」
「逆だよ。キミたちは先日事故に遭ったろう。日本の裏組織に消される所だったんだよ。だから守りに来たのだ」
パシュッ、という微かな音と共にそのエージェントの中の一人が倒れた。
「……サイレンサー銃……。オイッ、シールドッ!」
そのひと言と目配せで取り巻きの者が何やら防弾保護スクリーンを展開した。
「やはりこうなったか。久令愛くん、キミは我々の研究に大変有用だ。だがそれをやっかむ日本の連中が阻止するため、キミを抹殺しようとしている。今のもそれだ。
我が国に技術が渡る位なら消す、そう恐れての事だ。だから消される前に今すぐこの車に乗り給え」
……何言ってんだコイツら!
「冗談じゃない。久令愛、いくぞ」
兎に角ここにいたらマズイ。強引に手を引っ張って走り出した。
パシュッ、パシュッ、パシュッ
全速で逃げる俺らを掠める銃弾。
物陰からの久令愛への狙撃が烈しくなる。どっちに捕まっても久令愛が危ない。黒服の最初の五人と後からの紺色のブレザーの数人が追って来る。
全力出し切るしか! ケド追いつけねーよ!
サスガ久令愛のアーミーモードはパネー。
でも今はただ逃げるしかないが同時に2つの勢力だ。しかも一つは久令愛の命を狙ってる。
逃げ切れるのか? しかもこの攻撃は銃だ。つまりプロを相手に……。
「久令愛っ 俺は足手まといだ。邪魔しとくから独りで先に行け! それなら逃げ切れる!」
「ダメですっ! AIの予測ではその場合、あなたは人質に。むしろ最悪になりますっ」
クソ……今は考える暇もない。ただ走るしか……だが二つの勢力が互いに邪魔し合ってる!
これは有り難い。今の内に巻くしかない!
街路をジクザク進む。もし何かあれば久令愛の頭部だけは守らねば。後方を意識しながら路地から路地へ。曲がり切る前に追手の姿も見える。
ヤバイ。と次の瞬間、銃弾が久令愛の背中に命中。しかし中身は金属ロボット。
キンッッ
と高い金属音がするが動きに支障は無いようだ。
……んっ! マズイ!!!
拮抗する二勢力の中、抜け出した一人の俊足な男が銃を乱射しながら猛追して来た。
< continue to next time >
――――――――――――――――――――
遂に表立って久令愛を狙って来た2つの勢力。
日本の裏組織と大陸系エージェント。
もし、こんなAIが報われる日が来るのを応援しても良いと思う方は、♡・☆・フォローそしてコメントで加勢していただけると嬉しいです。
――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます