第34話 頼られまくる萌隆斗《めると》
「めるっち~~、何とかして~」
おっ! ゾンビメイクのハロウィンコスでも可愛さが分かるセナちゃん登場だ。
そっか、ここはセナちゃんと美貴ちゃんのいるブースだ! そう、VRジェットコースター。
3DVR映像に合わせて人力で座席を操作、まるで乗っているかの様な感覚になるアレだ。
「動きは良いけど映像ショボすぎって言われるよ~っ」
見てみると確かにヒドイ。何故この動画にした?
「だってぇ~、丁度いい長さのコースター物のようつべ動画で3DーVRのヤツがコレしか無かったんだよ~」
まあ、そう言われても……、と逃げようとした所、
「お願い! 萌隆斗くん……その天才的PCのスキルで助けて!」
あ……天使の誘惑が。そう、美貴ちゃんだ。しかも小悪魔スタイルでメッチャイケてるし!
でもここまで久令愛とコスが被ってるとは!!
[▼挿し絵] 小悪魔の久令愛&美貴
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16817330668167402554
「美貴ちゃんが言うならモチロン。久令愛! 何とかしてあげよう!」
了解、と淡々とした返事が返る。そして美貴ちゃんをチラと見ながら
「この方が美貴さんなのですね……フッ……まあ貸しを作るのもいいでしょう」
……って何それ ?! しかもその不敵な含み笑いは何?それを見た美貴ちゃんが少し驚きながら、
「この子が萌隆斗くんのナゾの妹分……か、可愛い……今日、連れてきてたんだ……」
「私は妹分では無く、時々妹で、かつ普段の設定は恋ングッ」
慌てて口をふさぎ、背に隠しながら、
「こ、この子は親戚みたいな子で……ちょっと妄想癖あって、まあとにかく任せてといよ」
そう言って久令愛を蹂躙して物陰へと連れて行く。そしてその優れた生成AIの力で何とか画像を改善してあげるように説得する。
「ナゼ自己紹介させてくれないのですか? あの方とは色々話したかったのですが……」
「えっと、ほら、今日は本来匿名で参加って言ったろ、仮装までしてるんだし。成るべく素性は伏せてくれ」
「そうですか、残念です。では、私の生成AI能力で全コマをスーパーリアル変換出来ますので。5分ほど時間下さい」
何故か微妙に不機嫌な顔。後ろ手に小石を蹴るような仕草は初めて見るものだ。ムスッとしながらも、
「……VR動画の高品位化、生成出来ました。既にクラウドにアップしてありますのでいつでも差し替え可能です」
という事で余りにリアルな360°VR画像になったことで大好評、セナ・美貴コンビとブースの全員からもお礼の嵐。
ただ、リアル過ぎて子供には泣かれるわ、吐かれるわで大変な場面も。それでもセナちゃんからは、
「めるっち~、ありがとねー! やっぱサイコーだよー」
照れたフリの愛想笑いでお茶を濁す俺。でも心は全く別な所にあった。何故なら――――
……にしてもこの4000コマ程の画像をこんな風に任意の背景にすげ替えて更にリアル化するなんて……
それも2Dじゃなく3D処理で!…… どんだけの高速ポリゴン計算……
―――こめかみに冷や汗が伝うのを感じた。
普通なら余程の天才スキルのプロンプターを、しかも世界中の生成AIに並列処理してもらわないとこの短時間では出来ない作業のはず。こ、これって……
スーパー……プロンプター……。
俺は思わず固唾を呑んでいた。
つまり今や自己成長した
**
ふと気付き、一段落見届けると美貴ちゃんから、
「今からフリータイムなの、一緒に回ろうよ」
と言われ、左右に1体ずつ小悪魔を連れて同行開始。微妙な三角関係の空気にしばし沈黙。
やや人見知り気味の美貴ちゃんがそれでも気をつかってくれて、
「
それに対し、微妙にふてたような口ぶりの久令愛が
「はい、私はメイ奴隷の久令愛です。今後とも宜しくお願いします」
「メイ奴隷……って萌隆斗くん、この子……」
オイッ! 何でいつもの爽やかな笑顔が無いんだよ! ……って考えても仕方ない。
「いや、だから今日の仮装のテーマだよ! 俺は普段親代わりのご主人って感じだから」
「はい。ご主人様を慰め奉仕する為に本日も同行しました」
アングリする美貴ちゃん。
「ゴメン、美貴ちゃん、……発言には余り気にしないで」
「そ、そうするね。……ところでセナがね、彼氏のブース、凄いから是非観に行ってって」
託人のブースか。
「これから行ってもいい?」
「モチロン美貴ちゃんの行きたい所ならどこでも」
*
とそんな訳でわがバディにしてライバルのブースヘ。
その屋外の会場の一角が凄い人集りになっていた。なにせあの託人のCNS試作用スーパ一ロボをそのまま出展してるんだからまあそうなるだろう。
あの美しい流線形かつスリムでスタイリッシュな未来型アンドロイド。そして光り輝くボディ。
それに加え体操選手のようなしなやかな動き。さすがに大人気だ……
っておい! 後方宙返り2回ひねりってちょっと……
『うおおおお――――っ』
当然場内が騒然となった。スポーツ、武術、力仕事のパワー。そして俺の作ったAIが流暢に託人と対話しながらの模擬救助活動……等々。
託人はこのロボットが未来においてどう活用出来るのかマイクを握って得意気にナレーションしている。どう見ても完全に未来を先取りしている。圧倒される観衆たち。
「セナの彼氏、凄いね~!
「あ、ああ……チョットね」
と、そこへまたクラスメイトが泣きを入れて来る。もうこんな時ばっかり御用達な俺。
「
「それは災難だな、にしてもアイツ遣りすぎだろ、いいヤツだけどスタンドプレイ好きが玉にキズだよな。競合がいるの分かってて手加減ねーのかよ」
「だろ~! 頼む~、天才に対抗出来るのは天才しかいないし~!」
そう言う事ならと事情を聞くと、ここの出展ロボットは『アバターロボット』という物だった。
そう、簡単に言えば『遠隔身代わりロボット』。
俺たちの目指す自律型AIロボットと対極を成す、もう一つの次世代の期待の星だ。
例えば災害救助で危険性が高過ぎて入り込めないような所でも作業者の遠隔操作でどこへでも入って行ける。
それならなぜこのブースに人気がないのか、説明を聴いてすぐに分かった。
「う……こりゃ酷過ぎる……」
< continue to next time >
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何だかんだで世話焼きの
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