第三章<転> 冬の発芽
第33話 遂に来た学園祭
秋も深まり、遂に来た学園祭、その初日だ。
久令愛の危機を知らせる警告―――――
日本のある組織が久令愛を捕獲、或いは最悪だと破壊を
―――― それについては最大の警戒を払っていたが、その後は特に怪しい動きもなく一安心して学園祭の準備に勤しんできた。
今年の当学園は仮装パーティ風にやるということで大盛り上がりだ。テーマは『ハロウィン』。モチロン時期が近いとそうなるのは必然。
更に今回は女子の理系推進のため 『 for ガールズ』と銘打って一般公開にしていて、学園側も知名度アップに力を入れてるようだ。
そんな訳でコミュ力の向上の為に……
―――― 遂に久令愛も学園行事に参加だ!!!
え? 大丈夫かって ?! フッ……
何せ『仮装が0K』なんだ! ならアレコレやらかしても全然怖くないのだ!!!
そんな当日、美貴ちゃんからも『手の空いた時間帯には一緒に回ろうよ』と誘われて俺は舞い上がっていた。
こんな俺でも科学的出し物になら役立つかも、と出し物の工夫に苦しむ何グループかから声を掛けられていた。グループ入りして一緒に考えてくれと。
いわゆる文化祭あるあるだが、企画がショボくて不評になりたくない、と立案者たちは皆必死なのだ。
だが俺は高みの見物だ。ククク、青春に命を懸けてるキミらの感性がこのヒネたオタクとは合い入れないものがあるからな、せいぜい青春の酸いも甘いも噛み分けていたまえ、諸君!
そもそも文科省としては学校の催事と言うものは
1.人間関係を上手く形成すること。
2.集団生活で、所属しているという実感や連帯を深めること。
3.公共の精神を培ってより良い学校生活を築くこと。
だそうだ。フン。
って、それが苦手だからヲタクやってるんだよっ! ヲタク嘗めんな!
ま、ここは人手が足りない単純作業の一員程度で気楽に済ますのがヲタク道というもの。只でさえ日頃久令愛のことで頭一杯なのにこんな所で磨り減らされてたまるか!
結果、お座なりに『人力コーヒーカップの手伝い』をする係で手を打っていた。
―――うん。我ながらクズだ。
我が校は科学を売りにしている分、関連の出し物も多い。
実験教室ではバイオ発電や、実験ショー 、メカの秀才たちの作品群の展示や体験操作などがズラリと並び、少年などには非常に興味が湧く内容が目白押しだ。
ま、『 for ガールズ』にはなっとらんが。
それでもかなり人の入りが良く、皆忙しく駆けずり回っていた。
ところが俺には意外にも自由時間が沢山あった。どうやら俺と同類のクズが多かったらしく、人力コーヒーカップには交代要員が豊富で、そのために短時間拘束で済んでいたからだ。お陰で久令愛を連れて歩き回れる。
「ほ一、ここに何時も
今日の久令愛はハロウィン定番の小悪魔風コスプレで堂々と校内を徘徊する。やっぱり人目を引く。
「ねえねえ、あの子見て、超カワイイ!」
うんうん、そうだろそうだろ!
ハッキリ言ってメッチャ似合い過ぎで可愛すぎる。こんな小悪魔に弄ばれてみたい。天使過ぎる小悪魔だ。いや、小悪魔過ぎる天使か。いやもうどっちでもいいか。などどバカな事を考えていると
「どうすんだ、意味ワカンネエってどんどん離れてくぞ」
等と深刻な声が聴こえてくる。
どうやらライブトークに国際性を持たすための工夫が裏目に出たらしい。
敢えて外国人大学生を起用して多ヶ国語を理解する3人が、全員別々の母国語でディスカッション……という過酷な状況を最新技術の翻訳アプリが会場へと同時通訳で伝えるスゴそうな企画。
それ故に注目されていた。でも欲張り過ぎだろ。
だがその3人自体はしっかり議論出来てるものの、肝心のアプリの翻訳がまるで役に立たず、そのトンチンカンな機械翻訳に観客が次々離れて行く。
「良い所に来た、天才
そんなの即興じゃ無理に決まってんだろ!
「頼む! 大学生にはかなり無理言って来て貰ったんだよ」
はぁ……こうなればやむを得ず久令愛を投入だ。そして仕方無くマイクを握る俺。
「さあ、これまではスマホレベルの自動翻訳ではダメだという実例を見ていただきました。そこでいよいよ本番、悪魔の翻訳ツールの登場です! 我が最新鋭AIをご覧あれ!」
小悪魔姿の美少女が登場。
久令愛の
最初は『オオ~、スゲ~』と感心されていたが、流暢に翻訳する余り
「あれって人じゃね? これじゃ技術の展示になっていないし!」
とまで言われ再び会場に不穏な空気。そこで気転を利かせた久令愛はその口を動かさずに話したり、全く別の動きにしたりでメチャクチャ笑いを獲ると、今度は瞬く間に
結果、大盛況となって感謝された。
ライブトークも終わり、やっと解放された俺たち。折角こうした所に連れてきたのだから久令愛に学生的気分を味わって欲しくて定番のお化け屋敷に回ったり、ピタゴラ装置やら、メリーゴーラウンド、バイキングなどに一緒に乗ってみたりした。
学生が作る程度のチャチなそれらにも楽しそうにしながら時折顔を合わせてニッコリと微笑むのは、AIがホスト的使命を持っていると自覚してのパフォーマンスなのだろうか?
もう、可愛い過ぎて胸が苦しいんですけど!
「何かニコニコしたくなりますね。これが『楽しい』と言う事なのでしょうね」
それでもそんな顔をされたらこっちが嬉しくなってしまう。
それなら次は何にしようか、と二人でフラつく。これは夢にまで見た……いや、見ることさえ想像もしていなかった学園祭デートか ?! 等と浮かれていると、
「めるっち~~、何とかして~」
あ! 今度は一体の美しいゾンビが登場!!
< continue to next time >
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こんな時ばかり妙に御用達の
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