第20話 久令愛、絶命まであと2分
「甘いんだよ、それで僕を出し抜いたつもり? 」
どこ迄も人を蔑んだ青島の三白眼。
「こっちはお前達を潰してCNSを勝ち取らせて貰うよ。それと研究成果も貰う。
お前らはデータを盗られないよう上手く隠してるけどそんなのカ~ンタン、諦めがつくようにいたぶってやるからすぐ差し出す事になるよ」
そういって20代位のいかにもチンピラ達をアゴで使って俺達を取り囲ませた。
「まずは骨でも2、3本折って遊びじゃないって分からせてやってよ」
とんでもないゲス野郎だ。だが絶対絶命か?
と、その時、TRUE-LINKによりスマホが遠隔操作され、スピーカーホンに切り替えられた。
―――― 久令愛の声が鳴り響いた。
「こっちの勝ちよ! USBキーなら取り上げてもうこちらの手にある !! 今からデータを書き換えるからそこで指を咥えてなさいっ」
慌てた青島達が騒然としてアタフタ見回し、
『誰だっ!コイツらの仲間か ?! とにかく急いでサーバールームに向かえっ』
と一斉にその場の全員が走り出した。
俺も訳がわからず「久令愛?」とスマホへ呼びかけると、
「ここ数日、萌隆斗さんの様子が変だったのでTRUE-LINKから全てを傍聴していました。そして割り出した敵のSNSをハック、今USBキーを持って逃げ歩く者から奪い取ってホストサーバールームへ来ています!」
久令愛は俺らから敵を引き離すためにわざとああ言っておびき出してくれたのか!
「今すぐ差し替えデータを持ってこちらへ!」
だがその事で敵は久令愛に照準を変えた! 10人程もいる敵から久令愛を守りながらデータ書き換え……出来るのか? 案じながら俺らも猛ダッシュ、1つ上の階へと辿り着くと……。
―――― 本当に久令愛は来ていた !!
そこへ奴ら全員が迫る。させるか!
俺と託人で少くとも4人は引っ掴むも、残りは久令愛に飛びかかった。だが久令愛は恐ろしく俊敏に逃げ回る。これは5倍速アーミーモードだ。
やがて敵が久令愛を挟み撃ちにして一人が殴りかかると、
スパンッ……!
瞬時にそれを掴み見事な一本背負いで気絶させた。ただ速いだけじゃない! 強い!!
「これは正当防衛ですっ!」
次々投げ飛ばし、早くも半数が床に伸びた。蹴り技男には足払いでスパンと倒す。久令愛が大活躍してる !! サスガ託人のロボは武術もラーニングしてあった。それを目の当たりに血相を変えた青島が、
「そいつはムリだ、頭を使えっ!」
久令愛の活躍で忘れていたがコイツらはこんな事に慣れてる輩だ。
あっという間に今度は俺らが取り囲まれ、気付けば羽交い締めで俺も託人も刃物を突きつけられた。
「大人しくしろ、こいつがどうなってもいいのか」
久令愛に向かって強迫すると「放しなさい!」と言いつつも抵抗出来ない久令愛。
「ソイツを縛れ」と久令愛はロープで上半身ぐるぐる巻きに。
不敵な笑みで指をパキポキ鳴らしながら俺等へ歩み寄って来る青島。
「手間かけさせてくれたねぇ……まあ女の子ならお淑やかにその状態で見てなよ。フッ……ボクに逆らうとこうなるんだ、よっ」
バキッ、ドゴッ
「ぐはっ」
「萌隆斗さんっっ !! 」
あぐぁ……ボ、ボディーブローってこんなに苦しいものなのか……コレ……気絶レベルじゃね……。
「そのロボット、いずれ奪おうと思ってた。だが手癖が悪くて強すぎる。用があるのはその優れた脳ミソだ、取りあえずやり返されないよう、オマエ等その首をもいじまえ!」
「久令愛ぁ―――っ!!」
数人に押さえつけられ頭に手を掛けられた久令愛に向かって俺は刃物をものともせず羽交い絞めを振り切って突っ込み、手にかけてた
パパァン、パパパパァン、
と閃光が燦めく。託人との共作秘密兵器、AI追尾ドローンが始動。
これは俺の動きで隙が出来たところで託人がポケット内のスイッチをオン、登録者以外の人間の目を自動追尾してフラッシュを焚きまくる20機の小型ドローンが俺達のリュックから飛び立ち相手を一斉に目眩まし。
『こんな事に役立つとは!』
この潜入で万一警備員に見つかった時の為の備えだったが。ヤツ等は視界を失い大混乱に陥ってる。今だ!
「うらぁっ!」
二人がかりで全員を次々と殴り倒す。直ぐに俺は久令愛に駆け付けロープにカッターを入れる。が、焦ってなかなか切れない。でもようやく切断されると、
「ボクの計画を邪魔するな~っ!!」
青島と部下の刃物が死角から託人ヘと突っ込む。無意識に俺は託人を庇って突き飛ばしていた。全てがスローモーションの様に感じながら、
『やべ、このまま両側から串刺しか……死ぬのか?』
と観念し、目を瞑った。
同時に「危ない!」と久令愛の声が聴こえた途端、突き飛ばされる感覚、転がりながらハッ、と振り向くと二本の刃に刺された久令愛の姿。と、
バシュンッッ !! ―――――――
と痙攣し卒倒する青島たち。残り全員も久令愛が駆け抜けると同時にビクンッと痙攣して倒れた。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16817330665430646387
全員微動だにしない。―――― 何が起こった ?!
頭の回転の早い託人が叫んだ。久令愛ちゃんに装備したAED用ハンド電源で咄嗟に電撃したんだっ、と。そして異様に焦った声で、
「ヤバイぞ萌隆斗っ! 久令愛ちゃんが死ぬっ!」
《――――自壊判定スター卜、あと2分で崩壊プログラムが起動します》
久令愛のAI脳から緊急音声が響いた。
「萌隆斗さん……私は……人に危害を加えてしまった……」
「いや、違う、俺を助けただけだ! それにヤツらは大丈夫だ。死んでない !! これは正当防衛だっ」
「いえ私への攻撃ではありませんでした……なのに命に関わる攻撃を……」
異様に引きつった顔の久令愛。確かにAEDというのは安全装置がなければ健常者には殺傷力が……
「萌隆斗さんへの攻撃を許せず……怒りに任せて……どうしよう……」
「でもあの時はこれしか無かったろっ」
「それでも絶対律は誤魔化せませんっ!」
《―――――あと1分で起動 》
「え、ここでサヨナラ? そんなのイヤです! 助けてっ萌隆斗さんっ !! 」
悲痛な焦りの表情の久令愛。こんなの初めてだ。
「やっとあなたに逢えたのに私はまだ何も出来てませんっ! 約束を守りたいんですっ、きっと役に立つと誓いました! 指切りもしたんです !!」
何とかして自壊だけは止めさせないと!
「そうだ! 約束を果たすまで、自壊なんて絶対許さないっ! 落ち着いて正気に戻れっ、久令愛ァッ」
「ああああ……起動しそうです!……どうしたらっ!……どうしたらいいんですかぁ――――っっ!!」
『――――自壊プログラム、起動停止措置可能残り時間、30秒!』
< continue to next time >
―――――――――――――――――――
破ると自壊の絶対律
――――人命に危害を与えない
――――人に永遠の愛を誓う
本来健常者に使えば心停止させる程の電力のAED。故に普通は安全装置が付いている。久令愛の手に内蔵のそれも久令愛の意志でコントロールされ安全な筈だった。
しかし
もし、久令愛の無事を応援しても良いと思う方は、♡、☆、フォロー、そして気軽にコメントをいただけると嬉しいです。
―――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます