第15話 名付けて、『TRUE-LINK』 だ!
興奮気味の託人の声がスマホから鳴り響く。
「夏休み前に入力したデータでどうしても必要なものがあって、先生の許可をとって学校の研究室に入らせて貰ったんだ」
そこで、自分のアカウントでPCを立ち上げたが、休み期間中の不正アクセスを見つけたという。
勿論俺達のロボットの開発デ―タがまるっと入っている。
「じゃ、何か消されたり改竄とかが?」
「それはないが探られたりコピーをされた可能性は否めない……」
「まさか重要なデータをやられてないだろうな」
「コアなデータは全てロックしてある。ただ気持ち悪いから俺の知り合いの事情通に調べて貰ったら、色々ヤバイ事が分かった」
冷静でクールな託人が今迄になくヤケに深刻だ。
「表沙汰にされてないが元々このCNS絡みには産業スパイにやられた過去が何度か有るらしい。有望な技術の盗用が……」
「酷いな。特許で防衛する
「噂では学校関係者の上層に内通者がいるのではと言われてて、しかもその疑いのある輩が裏口入学させたって言うヤバイ奴が俺らの学年にいるらしい。
多分、隣のクラスの『青島』って奴だ。悪い噂をよく聞く。何でも親の力が強く教師も知らんぷり、好き勝手やって周囲は泣かされてるらしい」
「でもそんなのがこのCNSに絡むのか?」
「それは分からん。だが油断せずに萌隆斗も出来るだけ安全策を講じておけよ」
「ああ。ただ俺は自費で契約してるクラウドサーバーに全部アップして学校には重要なもんは残してないから大丈夫だ。それに今俺は自分の発明に落胆している」
「は? どうしてそうなる ?!
「まあでも狙われるとすれば託人のメカの方だろ、本当に人の動きその物だ。俺のAIの方は日々挫折感の連続だよ」
「嘘だろ? ほとんど同じもん載せて貰ったけど最高じゃん。お世辞抜きで連日舌を巻きっぱなしたぞ、ウォズニアックテストだって大成功だっただろ」
「そ、そうか ?! ……まあ、託人には出来の良い方を譲っといたからな。満足して貰えてるなら良かった……ハ……ハハハ……」
「いや、本当に気を付けた方が良いから。警告したぞ。ロボットごと盗られる事だって有り得なくないぞ」
「……それは恐ろしいな、まあ気を付けるよ」
「それとこっちは防衛策も考えとくからその際には協力頼むぞ」
さすが託人には油断がない。ある意味頼もしいが、こちとら今は盗用されるどころかこのままじゃ全く買手も付かないレベルだ。
一番肝心な役割に対して壊滅的だ。果たして本当にこれをまともに調整出来るのか?
「はぁ―――……」
今はこんなのを作り上げてしまってどうしたものか、と溜息しか出てこなかった。
* * *
夏休み終盤。
久令愛との修業、いや、性能の最適化へ向けて日々研鑚に励む。てな訳で今日は久令愛を連れて商業ビルにやって来た。
コミュが主体でないウォズニアックテストは久令愛の得意項目かも知れないが、それでは存在意義が少ない。そこで次の課題だ。
「では次に通常のコミュニケーション能力がどの程度か、今一度、市街での買物で確認だ。街中で単独行動をさせるのは初めてだが慣れてもらう」
はい。とニッコリ微笑むとバレイヤージュの髪がサラリとそよぐ。なぜいちいちロボットにドキッとしなければならないのか自分が分からなくなる。
「決済用のスマホを渡しておくから今回は額は考えず必要そうな好みの衣類を買って来なさい。丁度衣服を増やしてあげようと思ってたから一石二鳥だ」
もちろん、本当は女子の服など買い方が分かる筈もなく、ネットショッピングで済まそうかと悩んでいた所だ。が、さもこれが理由とばかり言い訳する。
「当初、キミは代謝というものが無いからあまり服の代えは要らないと思ってたけど、やっぱり女の子。色々オシャレも必要だと思う」
「では
「ダメっ !! それだけはやめて! 分からなければちゃんとプロの店員さんに似合うものをコーディネートして貰いなさい! それでこそ今回のコミュ
「了解しました。必ずや最適なコーディネートをしてこのミッションを成功裡に納めて生還して見せます」
大袈裟な……
「因みに単独行動テストだから俺は陰から見守る」
―――― そこで秘密兵器の出番だ。
俺のスマホと久令愛のAI脳をWEB接続無しでもダイレクトに繋げられる直通アイテム。それはClass 1のブルートゥースによる映像・音声そして文字などによるやり取り。接続可能な最大距離は百mにも及ぶのだ。(Wi-fiやSIMでも可能)
「ほー、なら迷子の心配は皆無ですね」
は? GPS内蔵のロボットが言うセリフか? ……待てよ、それとも逆に俺の方向オンチのコトを気付かれたか ?! ……いや、真に受けるな。この子はアレだ。
「まあ最大出力だと日本じゃ違法になるから少しセーブして使うが、いずれにしても離れた所からSIMもwi-fiも無しにやり取り出来る。俺達にとってそれはまるでテレパシーの如し」
「いつでも繋がれてウレシイ。心強いですぅ!」
「―――― 名付けて、『TRUE-LINK』 だっ!」
得意気にスマホを天高く掲げる厨二な俺。
「今、オープンAIの翻訳で、真実の絆(中2設定)と出ました。……ちょっと素敵です。が、何故中2なのでしょう。確か
「フフ……オープンAIも間違える事が有るんですね!」
……真実の絆……
いや、その直訳……言われて見ればハズい……
悔しいが間違いとは言えない……
「ゴホン、ともあれまずは久令愛の視聴覚情報を送ってもらい、どんなやり取りが出来てるか遠隔で確認させて貰う!」
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16817330667060025305
< continue to next time >
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いよいよこんな久令愛を単独でコミュニケーションさせるという暴挙に出た
もし、こんなAIでも幸せになれる日が来るのを応援しても良いと思う方は、♡、☆、フォロー、そして気軽にコメントをいただけると嬉しいです。
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