第8話 恋でも始まるのかよ!
「ちょ……止めてくれ、何を不吉なフラグ立ててんだ」
「私は常に大規模ネットワークと繋がっています。そこで最も知見を得た結果を採用しています。先程の解釈、間違っていましたか?」
「いや、間違いじゃないけど、話の前後を読んでくれ、今は祝福の話がしたいんだ」
「了解。いつか祝福されるでしょう。当面予測がつきませんが」
「あ、あのさ、もうちょっと気分が上がる言い方をして欲しいんだけど」
「失礼しました。以後、気を付けます」
「あ、うん。……じゃ、とりま気をとり直して、と。今日は俺達の成功を願って、それとこのスタートの日の記念に、コイツをタイムカプセルに入れて木の下に埋めようと思う」
「それは……CPUですか?」
「うん。それをネックレスにしたもの。キミの制作過程でオーバークロックで無理させて熱暴走して犠牲になった子。いつか久令愛が立派に育ってここに戻って来た時、お礼を言うためにね」
「はい。儚く散ったこのCPUに代わって、そして、この子の為にも
「ははは、気持が上がった。有り難う、ぜひ宜しく頼むよ。……で、久令愛、キミはより高度な対面AIサービスをする次世代のアンドロイドのプロトタイプなんだ。卒業制作課題の完成までの向こう数ヶ月の中でしっかりバグをフィックスして行きたい」
「はい。宜しくお願いします」
さあ,いよいよこれからだ。学内、そして世界にいずれ発表出来るよう、この試作状態をより実用的に仕上げる必要がある。
世の中、机上のサービスとしてのAIはもう完全に実用的だ。それに比べて対面サービス、そこがまだ不完全。だからこの子にはそこを流暢に出来る様になって貰ってそれを元に完成品に漕ぎ着けて行きたい……
「より本物の人の様に……いや、本当に人としてキミは生きる。そして人間としてまだまだ至らない俺と過ごす中で、どう支え合って役に立ったり存在意義を見出せるか、それを二人三脚で考えて欲しい」
―――そう、俺の様に不完全な人にこそ役立てる事が対面アンドロイドに求められる資質。その点、練習台として俺は最適じゃないか! な~んて言いつつ欠陥同士の凸凹コンビにならんよう祈るしかないが。
「はい。大役を預かり光栄です。何より精一杯、
お、言い方が更に良いカンジに……。
「じゃあまず動きに不自由があるといけないし、バッテリーの持ちとかも掴んでおきたい。日常のあらゆる動作を一つ一つ上手く出来る様にやって行こう」
「はい。お互いもっと知り合って行きたいですよね。楽しみです。フフフ……」
……って言い方!……ああ、なんかじっと見られて赤面して来た。
「あっ、萌隆斗さん、今、熱が上がりました。お具合悪くないですか?」
「え?! どこも……熱?」
「はい。今、確かに頬の辺りの表面温度が0.5度上昇しました」
「な、何その能力」
「はい、ボディ開発の託人氏による情報ではこの体には様々なお役立ちユニットが内蔵されているとの事です」
「ちょ、聞いてないよ、ユニット? なら一通り先に知っておきたいんだけど」
「はい。では説明します」
……ったく託人のヤツは!
こう言うことは先に言えよ――――
***
「まずは先程の能力は赤外線サーモカメラ、温度分布が常に見えてますから発熱がある時もすぐ見つけてあげられます。その力で雨漏れも発見。更に暗視にも活躍しますよ」
「悪いこと出来なさそうだな」
「パワーアシストもあります。最強にした『アーミーモード』 では普段の5倍の力までOKです。ホラ!」
うわっ……ってお姫様抱っこかよ。ってハズい!
「いいから下ろしてくれっ! その可愛さに似合わん!」
「目から光、ハイパワーLED搭載、夜道も安心デス、ギラリ」
「まぶしっ! その目でいきなり振り向くな! こえーよ!」
「別の機能に切り替えて、放射温度計にもなります。また測距にも使えるレーザーポインタも目から発射出来ます。今、萌隆斗さんとの距離1m、秒速5センチメートルで接近中です」
「恋でも始まるのかよ!」
「更にレーザーは最大10mWまで出力可能、これは違法レベルで花火さえカンタンに着火出来ます。目が合えば一瞬で失明します」
「あぶねーよ! 何のための装備じゃ」
「声はのど奥の特殊スピーカーで口の形と完全連動したボカロで人の声を再現してますが、それ以外に音楽再生も10万曲以上可能です。あと色んな声を出せて声帯模写や偽装も可能、チュンチュン、ニャオ~、クゥ~ン」
「ちょっと可愛いな、特にその顔でやられると」
「更にデスボイスとかも出来ますよ。ギャオァ~~~~ッ」
「やめいっ!」
「く・ちを連・動・さ・せず腹・話術・や、超音・波・も」
「口と音声、連動させなさい! 天才腹話術師か!」
「大声だって100dB以上、拡声器にだって負けません。『ファオ――――ン、そこの車、止まりなさい』、とか」
「ウルサいっ、迷惑だろっ、今ここでやるな!」
「レーダー探知も搭載。遠方の色んな動きも感知出来ます。今、私の背後の池の亀が息継ぎで水面から顔を出してる筈です」
「あ、ホントだ……って忍者かよ!」
< continue to next time >
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早速凸凹マンザイの様相を呈してきた二人。
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