第7話 サブモード それは真実の姿
キミ、本当にカワイイね……等と生まれて初めて女の子をイケボで
キマッター!
……ってキザ過ぎんだろ、俺。……ん? 急に目線を外してどーした? 何その笑みを湛えながらの困惑顔は?……で、うつ向いてモジモジ……?
「え……そんな……メルトさんに言われると……う……嬉しい……です」
……って……萌えすぎるだろ! ヤベー。確かにこのドールを特注する時は俺より一つ下の16才で恋人設定のつもりだったが……これ、マジその気になっちまう! そうだ、こんな時は!
「サブモードォッ!!」
「了解」
――――― サブモード。
そう宣言すると、このAIがどんな判断をしたか確認出来る裏モード状態となる。イキナリ能面と化した
「今とった反応の選択判断を述べよ」
「はい。
それが好意を寄せる相手からそう言われた状況下で選択し得る数パターンの中で最も萌隆斗好みで適切と思われるものをマルチモーダル技術で抽出」
「アウッ……」
「同類の表現を人類史の中で近年どの様に表情と体で表すか動画サイトのデータベースより比較検討の上、言葉と態度を再構築、複数のAIが最適化し瞬時に体現致しました」
「んぐっ……」
「また、これをメインメモリに取り込み、次からは外部アクセス無しでも久令愛の常用パターンの一つとして登録済みです」
「もういい、分かった……。サブモード解除」
「了解しました」
……はぁ……虚しい。聞くんじゃなかった……次から夢を見たままにしよう……。しかし我ながらマジで良く出来てるな……
その久令愛は半眼だった能面から目をパチクリさせ、僅かに口角の上がった柔らかな表情に戻っていた。
「ところで一番大事な事を確認したい。キミのアイデンティティについてだ。絶対的な約束事、それを言って見てくれ」
「はい。私に課せられた絶対律ですね。それは、
―――――人命に危害を与えない
―――――人に永遠の愛を誓う
です。これに背けば自壊。プログラムが自動崩壊し、言わば脳死となります」
「よし、良くできた」
爽やかに軽く頷く久令愛。続けて言った。
「そして制作者・萌隆斗さんにより初期設定項目に次の事も
・16才、女子高生
・ご主人様の恋人
・オフライン時は萌え妹
と、この様になっています」
「うぐ、ちょっ……確かにそう書いたが……忘れてくれ」
「いえ、重要プログラムは自分で書き換え出来ぬよう暗号化ロックされていて無理です。初期化しない限りは。まっさらに戻しますか?」
「ど、どうしようか……」
「ただ一つ認知しておいて頂きたいのですが、先程の起動時の挨拶はプログラムされた儀式のようなもので、本当はずっと前から
「そ、そうなの ?!」
……って確かに小学生から手掛け始めたものだけどAIに自意識なんて無いはず……
「何故なら一度もメモリークリアしてないんですから。しかしお望みとあらばクリアを覚悟します。ただ初期化は私の死を意味しますがどうしますか? 死にましょうか? 生まれて間もないですが」
「……ってその聞き方、止めてくれる ?!」
「今なら各方面への影響も有りません。再起動後は輪廻転生で赤子のように生まれ変わるのと同じです」
「いや、だからもういいって……取りあえず今日はもう遅いからしっかり充電して、明日、外出テストから始めよう」
* * *
もうすぐ夏本番。全てはここから始まる。
セミの声が響く心地よい快晴の中、俺は近所の馴染みの公園に久令愛を連れてやって来た。
「久令愛、ここをよく覚えておいて。記念に俺たちはここからスタートする事にした。このコトリの桜の木の下から」
「コトリの桜? ……データべースに有りません」
「うん、ここの桜が咲くと花の蜜が多いらしくてね、ここだけ
「なるほど。はい。覚えました。思い出の場所なのですか?」
「いや、これからそうなるんだ。キミを搭載用に完成した時、桜の花びらが舞ってきて祝福してくれたんだ。だからここへ。
そしてキミのラッキーカラーをピンクとした。今着ているミニのワンピースもその体を作った会社に特注してピンクのものにしてもらったんだ」
「はい、とても可愛いです」
「そしてこれから相棒とコンペに採用するAIのレポートで競い合って、その果てに来春、俺達はここに戻って笑顔で桜の花に祝福されたいと思って……そのイメトレも兼ねて来たんだよ」
「はい。桜は日本人が特に好きな花なのですよね」
「そう。春の到来の象徴。俺の春、そしてキミは桜」
「了解しました。私は桜。
「え……」
< continue to next time >
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早速不吉なフラグを立てる久令愛。
もし、こんなAIが幸せになれる日が来るのを応援しても良いと思う方は、♡、☆、フォロー、そして気軽にコメントをいただけると嬉しいです。
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