第20話
「あああ ねみぃ・・・ 誰かさんのせいで寝足りないんだけど?」
目にクマを作ったアッシュはそう言うと自分を睨む。
「すいません」
「あ パイン おまえ頭あらってこいよ それもう取っていいぞ」
ずっときつく巻いていた包帯のことを言っているんだろう。きつく何重にも巻かれたそれを外すのに一苦労してしまう。
外した包帯は布と言い難いほど変色し、自分の血や汗そして土などが混ざり硬く分厚くなっていた。
ずっと気になっていた耳の形状を手で確認すると思っていたほどひどくない。以前の形状を維持しているようであった。
ただ、おそらく深く裂けたであろうそれは耳の根本から外側にかけ、傷のせいで少しばかり線状に盛り上がっているのが感触でわかった。
「お~~ くっついてる やっぱ俺天才だわ~」
自分の傷跡を見て笑うアッシュがそう言う。
「やっぱり裂けてたんです?」
彼はそうだと言い、目線を少し遠くにやり、早く行けといった。
川の水は冷たく、寝不足をどこへやら、それを洗い流していく。
パインの泥だらけの鈍い色の金髪が川の水の中を泳ぎ、元の色を取り戻していく。
(沁みると思ったけど、冷たすぎてそれ以外感じないわ)
洗い終え、髪を乾かす。そしてもうすでに仕事に取り掛かるアッシュの元に駆け寄る。
「ちょっとこっちこい、見せてみ」
パインがアッシュに頭を預けると、彼は「あ~」と言い、笑っている。
パインの耳の後ろの頭にそこそこ大きな線状に抉られた傷跡が残っていた。
「ちょっと間抜けだが ・・・・・・ まぁいいんじゃないの?」
自分では気が付かなかったそこに手で触れると確かに線上に数センチのハゲがあるのが分かった。
「うぅ ・・・・・」
自分のその表情を見て、アッシュは道具を手放して腹を抱えて笑っていた。
「人の傷を見て笑うのは良くないと思います」
「いいんだよ 俺だから あっはっは」
「・・・・・・」
パインはアッシュに対して色んなところが人間離れしていると感じてしまう。
その後は順調に作業が進む。
昨日加工した3メートル程の所々に穴を開けた丸太を横にし、土台にした丸太にはめ込んでいく。
アッシュは水平を目測し、パインはその指示の下、木のハンマーで丸太を打つ。
それらを4回行い、4本の丸太が均等に土台の上に並列して乗っかる。
その上にさらに交差して、同じ長さの丸太を並べて敷き詰めるようにして置いていく。
両端だけ、加工が入っており下のそれとうまく固定した。
間の丸太はパインが開発した「小ロープ」できつく結んでいく。
「ん~まぁこんなもんかね」
まずまずの出来なのか満足げな顔を作るアッシュ。
「すごいですね ・・・」
出来上がったこの「丸太の土台」に乗ると、先日自分が作った椅子とは打って変わり非常に安定しているのがわかった。
そして何よりこの短い時間でここまでの物を作り上げた事が非常に嬉しかった。
「ある程度巻けたな」
そうアッシュが言うと、バイクに行き、何やら小さい本を取ってくると、それをペラペラめくり何やら考えているようであった。
「よし 森行くぞ!」
ここからの行動がまずかった。
トゥエルブ 龍眠る世界にて 金髪青年の現実は理想を夢見る 善義 @ysys3685
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