第15話
「おい 起きろポンコツ」
そう言われ、はっと飛び起きる。
「す すいません 寝すぎました」
昨日はあのまま肉だけがむしゃらに食べた記憶しか残っていない。随分長いこと寝てしまったように思えた。
「いや そんなことないんだけどさ お前 水浴びしてこいよ」
(ちと やりすぎたか)
アッシュは不格好な丸太いすを見て苦笑いする。
(あんな太い木をさ 普通手ノコで切ろうとする奴がいるのかね ・・・)
冷たく透き通った川が朝日を浴びて美しくそれを反射する。
「いたたっ」
マメがつぶれきった手のひら。それに付いた血を川の水で洗い流す。
半裸姿となり、全身に水を浴びせる。頭から行きたかったがまだそこの包帯は巻いておけとアッシュに言われたので首元まで川に浸かる。
泥や血で川の水が少しだけ濁る。しかしそれはほんの少しで、あっという間に透明な水の流れに戻っていく。
昨日の朝の気合を取り戻したい。川の水の流れを体で受け止めてみる。
(よし)
両手でこぶしを作ってみる。
「いってぇ~~」
酷使しすぎた手のひらはもはや何も握れる状態ではなかった。
川から上がると、アッシュが見かねて再度手に包帯を巻いてくれた。
その後、アッシュとロープと斧を持って森に入っていく。
「ちと見てろ」
彼は斧を用いて木を切っていく。ものの数分であの木ほどは太くはないがそれをなぎ倒した。
「俺さ ノコギリ使えって言った?」
「いえ 言ってないです」
「お前さ ノコ1本折ってさ それにお前の手 普通の医者なら1、2週間安静にしてろって言うぞ?」
「はい ・・・」
「はい じゃねぇんだよ 頭を使えって言ったの覚えてるのか?」
(そうか ・・・)
俺はわざわざ大変な方を選んでしまったのか。ほかの選択肢があるのにも関わらず。
そしてその選択によって大事な道具と、そしてこれからの時間まで失ってしまったんだ。
アッシュはそのことに気が付いた自分を横目で見ると「ふん」と鼻を鳴らした。
「まぁ 分かりゃいいよ じゃあ今日は俺が倒した木 運んでな」
「わ 分かりました !」
油断していた。今日は休みという言葉を待っている自分に気が付いた。
「おまえ 今 休みと思ってなかったか?」
アッシュに全て見抜かれ、パインが冷や汗をかいたのは言うまでもない。
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