時より揺れるバイクにまたがりパインは思う。

この状況はいったい何なのだろうかと。

役所で受けた依頼は決して手に負えるものではない。それだけは確かだと思う。

ただこの前に座る灰色の髪の男に全て委ねるしか今の自分にはできない。

（・・・　ここは　・・・）

先日自転車を必死になって漕いだ道と同じ坂道。

自転車のスピードとバイクのそれの差になんだかやるせない気持ちがわいてくる。

そして前は、ここから少し行った所の交差点を曲がり、森へと続く道に入った。

森に入ると自転車を乗り捨て、徒歩でひたすらその中を何時間も歩いたのであった。

背の高い木で覆いつくされる暗い森の中を思い出した。

危険なのは分かっていた。けれども後には引けないとも思っていた。

今考えるとあのような無謀な行為をなぜしてしまったのかと疑問に思えてくる。

何かが自分をそうさせているのではないか、そう思ってもおかしくはない。

そしてその流れがいまも続いているのかもしれないと。

（まぁ　それでもいい）

パインはまた別のことを思う。

冒険者の数は決して多くない。この平和な町でわざわざ身を危険に晒すということが、どれだけ無意味か。

そういった事を誰からではなくとも聞いて育ってきたと。

そんなことを思っていると、前方から冒険者と思しき数人の乗ったトラックがやってくるのが見えた。

そのトラックは簡素であり、白一色で塗装されている。

生死をかけた行いをするのにも関わらず、彼らの表情は、豊かで明るい。

（・・・・・・・・・・・）

初春の空気は、高度を上げ、さらに冷たくなりパインの耳の傷をよりいっそう痛めつけた。

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