第9話
この世界には休日も平日もない。そこには、ただ1人1人に仕事が分け与えられ、個人とその部署の判断で休日が設けられる。
町ごとに特色こそあれ、国といった概念は薄く各々が自由に生を営む。
それにより人々は自分の興味に沿った人生しか歩まない。
パインは耳に手を当てている自分をまだ見つめている。
商店街を巡り歩く人々の談笑は彼の耳に入ってこない。
彼は過去を思い出していた。
(・・・・・・・・・・・・)
「「ブゥーーーーーン」」
ステンレスの床にまた同じ素材の大きなタンクがメートル単位の間隔で並ぶ。
蒸気や水、エアー等の配管がいたるところに、血管のように張り巡らされている。
天井は高く、そこに秩序正しく並ぶ照明がそれらを白く照らす。
同じく白い衣装を身にまとった人々が無言で機械を操作している。
「あんたが調剤みすったからあたしがさぁ!」
女性の声が機械の音に交じって、工場内に響く。
「すみません すみません」
パインはただ体を折り曲げそう言う。
「分かったから早くあっち行ってよ もう」
明らかに不機嫌そうに女性はそう言う
「あっ そこ 今その機械調子わる ・・・ 」
怒られたことによる彼の緊張と機械の音で彼の言葉は女性に届かない
「何言ってんのよゴニョゴニョ いいからあっちいってよ もう」
「わ わかりました」
仕事を失ったパインはうろうろと工場を歩き回る。
「あっちにいけ」と言われたから何をするわけでもなくぶらぶらと歩いている。
ただ、言われた言葉が頭から離れずいつも以上に頭を使っている気がしてしまう。
そして数分後、パインの耳にこの世の者とは思えない叫び声が飛び込んでくる。
過去の情景が止み、再び自分を見つめる
「ぎゃあ」という声が何度も頭の中をまわる。
左耳が熱を帯び、うずく。
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