第5話
外に出ると間借りしているアパートのそばに男のバイクが止まっている。
「おら 早く乗れ」 足早にバイクへと跨る男がそう口にする。
初めて乗るため、まごついてしまう。多分こんな感じで乗ればいいのであろう。
「すいません 初めて乗るので ・・・ 」
「気持ち悪いこというなよ」 男がぼそっと呟いている
後部座席から男の顔を見ると少しだけ口角が上がっているのがわかった。
このバイクは自分が知るバイクとは少し違う気がした。黒をベースに赤いラインが塗装されている。
またタイヤが太く大きい。そして後部席の後ろには大きめの四角い箱が取り付けられている。
ダサいと言えなくもない見た目であった、しかし実用的なんだろうと思うようにした。
「「ぶぃぃいいーーん」」
轟音とともに見慣れた道を、いつもと違うスピードで走っていく。
(しかし どこに連れていかれるんだ?)
見ず知らずの男の背中を見ることしかできない。
男の着ているジージャンが風を浴びてカラカラと音を立てる。
その先がバイクと羽根を握る自分の手に時折ぶつかり痛い。
かといって手を離す訳にもいかない。
(もどかしい なんなんだいったい)
10分から15分ほどで着いたのは先日自分も来たところだった。
慣れない足取りでバイクから降りる。
「おら 行くぞ あ? おまえそれしまえよ あぶねえな」
男はそう口にすると荷台を「ぱか」と開け、羽根を仕舞うよう促す。
(なんだこの道具は)
荷台の中は格子状に仕切りが付いており鞄や様々な道具が整然とならんでいた。
そこに羽根を無造作に仕舞う、そして2人は大きな四角い建物に向かって歩きだす。
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