第3話
「「うわぁああああぁあああ」」
あたりを見回す。
(あれ ・・・ ここは)
ここが自分の部屋だということに気が付く。
朝なのだろうか、カーテン越しに光が差し込んでいる。
雑誌や漫画が無造作に床に散らばっている。
自分がいるのはいつものベッドの上だ。
(夢か?)
そう思い、あたりを見回すといつもと違った光景がある。
ベッドの後ろのタンスの上に置かれた、キレイな羽根が目に飛び込んでくる。
穴で拾ったあの羽根だ。しかし持ち帰った記憶などない。
(夢ではない けど ・・・・ どういうことだ?)
それに手を伸ばそうと体に力を入れるが
「いてて・・・」
この状況に輪をかけて、鋭い痛みが自身に襲い掛かる。
(・・・)
ふと手をみると包帯が巻かれている。
また、左耳を触るとツンとした痛みが走るとともにゴワゴワとした感触が手に伝わる。
「何が起きたんだ」
そういわざるを得ない状況。
空調と部屋の外から響くいつも通りの雑音が青年の小さな部屋にむなしく響く。
(・・・・・・・・・・・・・。)
「「ガチャ」」
ドアノブの音が静寂を破る。
はっとその音の先を見ると、長身で細身の男がずかずかと部屋に入り込んできている。
「よお、ぶよ男くん」
こちらが反応する前に男はそう言ってきた。
男は狭い部屋の通路を歩く中おもむろにポケットから菓子パンを取り出す。
その包装を器用に片手で開け、中身を口に運んでいる。
「どなたでしょうか?」
ただでさえ訳がわからないのにも関わらず、さらにもう一つ思案する対象が出現する。
(頭が痛い・・・・・)
「いや、ありがとうでしょ 状況から考えてさ?」
男はむしゃむしゃと菓子パンをほおばりながら不機嫌そうな顔をこちらに向ける。
(あんぱんだ)
(・・・・ じゃなくて この男が俺を助けてくれたのか?)
「ありがとうございます」
この男があの窮地の中の自分を助けてくれたのであれば、感謝の言葉を伝えるのは当然かもしれない。
(たとえ身に覚えがなくとも)
半ば言わされてはいるが、そう口にする。
「そうだよ めちゃくちゃ重かったんだからね」
男はそう言い、不敵な笑みを浮かべる。
「ああ 座ったままでいいぞ」
自分だけベッドにいるのが気まずくなり、そこから出ようとする。だが男がそれを止める。
数秒の沈黙と男の目が何か聞いてみろと訴えてきているきがする。
それに甘え疑問を投げてみることにする。
「あなたがこれを その 巻いてくれたんですか?」
なんとなくこれを聞くのが一番先な気がした。
「そうだよ そんなことよりお前重たいんだよ」
そう言う割に目が笑っている。本当にこの人が助けてくれたように思えた。
もともと自分は人見知りなどするタイプではないので、こうはっきりいってくれる人のほうが気を使わなくて楽で助かる。
「でさ なんであんな所いたの?」
男がそう口にした後、半分ほどになったあんぱんを一気に口に放り込んでいる。
「えっとピークックの羽根を探していまして・・・」
男は自分が口にしたそれを聞くと目を大きくし、喉元まで来たであろうあんぱんの咀嚼物でそこを詰まらせかけていた。
「ぶはぁっ げっほ ぉ」
男は胸をトントンと叩き喉に詰まったあんぱんをどうにか流し込んでいる。
(何かおかしなことでも言ったのかな)
「ぶは おまえ相当バカだな」
「あんな所に居るわけないだろ もっと近くにいるだろうによ」 男は涙目でそう口にする。
「はい でも探しても見つからなくて しょうがないので自転車を走らせているうちにあそこまで行ってました」
嘘を話しても意味がないので正直にそう言う。
「・・・・・・ そうか 」
男は顎に手を当てこちらを鋭く見つめる。
男の眉と目の間は狭く掘りが深い、その顔立ちのせいでパッと見るだけだと睨まれているように思ってしまう。
だが、その目が訴えているのはまた別の違った物な気がする。
男は長身で細い体に程よいサイズ感のジーパンとジージャンを身にまとう。
髪の毛は短髪で灰色、顎髭が少し伸びそれがある程度整えられている。
顔立ちは自分とは違い、鼻も高い。
まったく別の土地出身であることがその見た目から分かる。
だが何故か、言葉こそきつめではあったが、その男に今の自分が求めているような安心感があるのに気が付いた。
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