第三話 とりあえず寝よう

目を開けると、見慣れた街に、手にはタバコとビールのセット。戻ってきたんだ。

そうそう、スマホが使えるのか、だとしたら家族にはあとから連絡できるな。

彼女の美幸にも、そうだな、今からじゃあ間に合わない。後で連絡しよう。

1時間か、何もすることがないな。でもふと我に返った。あれは夢だったんじゃないか?

考えれば考えるほど、現実ではない気がしてきた。


「いやぁ、だよなぁ。夢だよな、ははは。」


ちょっとがっかりしたが、楽しかったなぁなどと考えていた時に自分の腕の違和感に気が付いた。


「え、うわっ、夢じゃなかったのか、なんだこれ?数字?カウントダウンしているのか・・・。」


腕には数字が表示されていて、時間を表しているようだ。残り40分だろうか。


「早く帰って支度だな。まったく、すごいな。ていうかこの腕を見せるだけでもどっかの秘密組織かなんかに連れていかれて人体実験でもされそうだな。」


切り替えて早速準備にとりかかる。といっても携帯と、タバコをカートンで持っていくくらいだが。

向こうの世界にもタバコはあるのだろうか?お金は、流石に使えないよな、免許証もいらないか。

1年も留守にするんだからどこかに隠しておかないとなぁ。そこで思いついた、近所に住んでいる友達に預かってもらうか。俺は徒歩3分の友人宅へ向かった。あきらの家だ。


あきら「よぉ、こんな時間にどうした?」


信「ごめんごめん、ちょっと頼まれてほしいんだ。」


あきら「なんだよ、てか、まぁ入れよ。クーラー壊れてて暑いけどな。」


あきらは苦笑いしながら俺を招き入れてくれた。おぉ、確かに暑い。

どこまで話そうか、まぁ時間もないし適当に言って貴重品だけ預かってもらおう。


信「いきなりなんだけどさ、ちょっと時間なくて、何も聞かずにこれ、預かっていてくれないか?1年程。」


あきら「えっ?こんなの、いや、お前失踪でもすんのか?どうすんだよ、身分証とか、金とか、必要なもんばっかじゃねぇか。お前隕石が落ちてくるからって、何を考えてる?」


そういって少し怪訝な顔をしていた。まぁ当然の反応だろう。


信「大丈夫だよ!死んだりしないし、まぁ失踪ちゃ失踪になるのかな。でも絶対戻ってくるから。

俺世界救ってくるよ、ついでに地球もな。」


全然冗談ではないが、冗談っぽく言ってみた。


あきら「まてまて、は?ついでに地球って、じゃぁどの世界を救うんだよ。まぁいいや、こんな世の中だ、頭がおかしくなるのも珍しくないな。預かっといてやるよ、秘密にしておいてやる。でも死ぬんじゃねぇぞ、自殺なんて許さねぇからな。」


信「ありがとう!恩に着るよ、金盗むなよ。」


あきら「当たり前だろ、3万だけだ。」


あきらはケタケタ笑って、それ以上何も聞いてこなかった。

そんなやり取りをしているうちに時間が来てしまった、どうなるんだろう、突然消えるのかな?

残り0になった瞬間に目の前がぼやけ、耳鳴りがして、周りがいきなり光った。


あきら「・・・。えっ・・・?信?消えた?うーん、寝不足かな。とりあえず寝よう。」


強い頭痛を感じて目が覚めると、どこかの家の中にいた。そばには俺のスマホとタバコがあった。ここは異世界なんだろうか。家具も普通に地球にあるものと変わらないし、ちょっと古いかなってくらいだ。


スマホは電波が繋がっていてた。あぁ、ここが異世界という証拠がある。唯一充電マークがなんだかおかしい。無限マークか?充電いらずの最強のスマホになってしまったみたいだ。俺はさっそくあきらにメールを送ってみた。


「なんて送ろう、異世界に到着しました。でいいか。」


すぐに返信はなかった、寝てるだろうな。俺も寝ていないし取り合えず寝ることにした。

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