第5話 見つけた

「…ユウ?…あなた、なんで私の名前を知っているの…まさか」


夕の魂を持った銀髪の少女が何か言いかけた時。


「…そこまでだ」


そう言いながらこちらに向かってくる人物。


ヘルムのない白銀の全身鎧を纏った金髪の青年。


「…まずいわね、追いつかれたわ」


「…「開闢の勇者」ユウ・ウラシア、聖教会第12番使徒「正義」が貴様を捕縛する」


開闢の勇者って…待てよ。


「勇者?」


俺がそう口にすると。


「…貴様は誰だ」


そう金髪の青年が話しかけてくる。


「…通りすがりだ、ただの」


「なら、さっさと去れ、さもなければ排除する」


随分、強引だな。


俺がどうしようか考えていた時。


「…私は魔王を倒す勇者よ!戦争のための兵器に改造される気はないわ!」


銀髪の少女が叫ぶ…戦争?兵器?


「なにをふざけたことを…異教徒共の排除も聖教会の勇者の役目だ」



…なるほど、だいたい状況は読めた。


聖教会とやらが、魔王を倒す勇者である彼女を宗教戦争に利用しようとしているということか。


…なぜそう断定できるのかって、簡単だ、俺は魂が見える、故にその人物の実力というものはある程度推測できる。


そうして推測した結果、こいつらは明らかに一般人とは隔絶した能力を持っている。


それこそ、一人で軍勢を相手どれるほど。


そして、なにより。




―異世界か~、じゃあさ~私は勇者ね、それで魔王を倒しに行くの―


―それで…世界を救って、それでね?―


 


この「ユウ・ウラシア」という名の少女の前世、「小鳥夕」はそう言っていたのだ。


そしてそれが実現できるように俺はその時、彼女の魂に世界一つ分の力を流し込んだ。


つまり、そういうことなのだろう。


そして何の因果か、その彼女の願いを邪魔しようとしている奴らの一人が目の前にいる。


考え込んでいると話が進んでいた。


「とにかく!私はあんたには捕まらないわ!私の勇者の道を阻むというのなら…倒すまで」


「…俺と戦うか、開闢の勇者、貴様は自分がまだ未熟だと」


「おい」


そこでいきなり割り込む俺


「ちょっ、あんた!あんたみたいな華奢な女の子がこの戦いに巻き込まれたら、ひとたまりも」


「聖教会第12番使徒のなんとか…だったか」


「…だからなんだというのだ、貴様」


金髪の青年は少し怪訝な様子でこちらを見ている。


俺は…俺には夕が最後に言った夢を実現させる義務がある。




「装填」




「…よくわからんが…まずは貴様を排除する」


「ちょ、あんた!」


焦るユウ、突っ込んでくる青年。


「世界放ち」


俺は放つ、突っ込んでくる青年に対し問答無用で、世界の質量そのものを。


「なっ、にっ!」


今更気が付いても遅い。


お前はきっとこの世界では最強クラスなんだろう、だがいくら強かろうと、人ひとりが…世界そのものと相対できるはずがない。


―轟音


「世界放ち」をまともに食らった、奴は鎧の破片をまき散らしながら吹き飛んでいく。


「…どゆこと!?」


ユウが驚愕と疑問の声を上げる。


「聖教会の…使徒が…一撃…?あなた…一体」


「簡単だ…俺は異世界から来た」


「異世界?…それは昔の大勇者と同じ…えっ、ほんとに!?でも、確かにあの力は…いやでも」


少し混乱した様子のユウ。


その手を、俺はとる。


「へっ?」


「お前を助けるために」


俺にはその義務がある。


「ええええええええっ!」














私はユウ・ウラシア、魔王を倒す役目がある勇者の一人「開闢の勇者」だ。


そして今私は変な状況に陥っている!


聖教会の最高戦力「使徒」に追われていた私の前に現れ、「使徒」を一撃で倒した女の子。


黒髪にオッドアイの綺麗な女の子だ。


その子が言うには、異世界から私を助けに来たらしい…どゆうこと!?



…あれ?


なんか、この子の雰囲気にどこか…懐かしさと…愛おしさを…。


てっ!ちょっと何言ってるの私、この子は女の子だよ!愛おしさって!


でも…どこかで会ったような。


…って!そういえばここでこんなことしている場合じゃなかった!まだ追手が!


「と、とにかく!ここを離れましょ!」


「…おう」


そのまま素直に私の後ろをついてくる彼女。


…うーん、なんかよくわからないけど、今はとにかく追手を巻かなければ。














「見つけた」


町の一角の民家の屋根の上に腰掛ける人物がそう言う。


「僕の同類」


人物…作り物めいた整った顔立ちの少年。


「まずは、挨拶しておこうかな?」


少年は笑う。




「装填」




そう言って彼は、


「始まりと終わり、誕生と死、どちらが…上かなぁ?」


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