第3話 プロローグ3 人として
小鳥夕とはいつの間にか仲良くなっていた。
きっかけはよくわからない、だが今は大切な友人。
腐ろうが風化しようが絶対、縁を切りたくないと思うくらいには大事な存在。
実際、色々と世話になっているしな…だからな。だから。
「…ここは?」
気が付いたたらあお向けで地面に倒れていた。
「大丈夫ですか!」
とこちらをのぞき込んで切る碧眼。
「こちら、エンジェル1、一般人と思われる少女を確保、意識はあります」
わずかに光を放つ、碧眼、これは魔法少女の瞳。
なぜ、ここは。
首を少し横にして見る、視界に映るのは瓦礫。
なんだ…ここは、俺は一体。
…そうだ!
「夕は」
「夕?」
「小鳥夕、俺の友人だ」
「なるほど」
そう言って俺を介抱していた魔法少女が言う。
「隊長、魔女化現象対象者、あの魔女は「小鳥夕」という名前です」
魔…女…。
そこで思い出す。先ほど小鳥が真剣な表情で何かを告げようとしたとき。
彼女の両眼が、赤く輝きだした光景を。
そんな…まさか!?
「彼女は…俺の…大切な友人なんだ!」
「落ち着いてください、その人はもう…魔女になってしまったのです」
魔女、人類の天敵、言葉など一切通じない怪物。
遠くから破砕音が聞こえる。
きっと、彼女はこれから多くの人を死傷させ、そして無力化され、地下深くに埋められるか海洋投棄されるか。
彼女はそこで半永久的にもがき苦しみ続ける。
…ああ…ああ、おいおい、これが俺の一番の友人、てきとうに生きてきた俺にできた初めての友人の…結末か?
「ふざけるな!」
「…」
拳を地面にたきつける
白魚のような腕の先の拳の皮が破れ出血する。
くそ、くそ、くそ、くそ。
俺になにか、なにか、彼女を夕を救う何かがあれば!
おい!このオッドアイは飾りか?ははは、クソ
―ありますよ―
突然俺の脳内に響く声。
なん…だ?
―力がありますよ―
よくわからない、わからないが。
なら、彼女をもとに戻す力を
―それは無理ですね、あの現象は不可逆です―
…はは、なんだ、妄想すら否定するか!
―ただ、あの哀れな少女を救う方法はあります―
…な…に?
―あの少女を正しく葬って不死から解放すればいい、そうすれば少女の魂は別世界で転生するでしょう―
正しく…葬る?
―さあ、覚醒の時です、偉大なる「魔神」よ―
―魔法―「世界葬」獲得―
そう頭に流れてきたとき、俺は本能的にその魔法の大まかな内容を理解する。
「魔法「世界葬」」
魔術でも、暗黒魔術でもない…魔法。
この魔法「世界葬」の本質は数多ある平行世界のなかで滅び去った世界を利用する、というもの。
「装填」
滅びた世界の核を複数個「装填」する…そして。
「世界纏」
その滅びた世界の一つを纏う。これにより俺のあらゆる能力はその世界の質量分、増加する。
つまり世界一つのエネルギーをパワードスーツのように身にまとったということだ。
「ちょ、あなた!」
「大丈夫、問題ない」
突然立ち上がったことで近くの魔法少女の一人に驚かれるが無視する
「!?…膨大な魔力の残滓、あなた一体何!?それに何を!?」
「…なに、ちょっと大切な友人を…看取りに行くだけだよ」
そういって俺は戦闘音が響く方角へ向け、地面をける。
―ドヴぁ!
地面が陥没し反作用で俺の体は宙を舞い、弾丸のごとく速度で目標地点へと向かう。
とある県のとある市の魔法庁支部管轄魔法小隊の隊長である魔法少女は危機に陥っていた。
彼女は単独で魔女を相手どれるほどの実力ある魔法少女でこんな地方にいる理由が謎なほどであった。
そんな彼女と彼女の正体は…たった一人の魔女に追い詰められていた。
「なんなのよ!あの異常な力は!」
鑑定結果は黒魔術「終焉」、聞いたことのない、おそらく初確認の黒魔術。
このままでは直に死傷者が出る、そう考えた時だった。
「これはまた」
声が、こんな状況なのに落ち着いた声が聞こえた。
慌てて振り返るとそこには…オッドアイの美しい少女がいた。
しかし、その少女は異様だ。
なにせ
「超高密度の魔力を…纏って…いるだと…!」
異常なほどの魔力、まるで目の前に宇宙そのものがあるのではと錯覚するほどの密度。
何者か、まさか。新手か!?
「俺はただ、友人を看取りに来ただけだ…邪魔は…するな」
その言葉だけで歴戦の隊長を含めた小隊全員が戦意を喪失してその場にへたり込む。
格が、存在の格が、違う。
そうしていると、周りの建物を破壊していた理性なき魔女が、少女を見据える。
そして瞬時にとびかかり、その爪にまとった黒い霧ごと殴りつけようとして。
「世界穿ち」
轟音、そして魔女は少女に迎撃され吹き飛んでいく。
「さて始めようか。夕、お前の葬儀を」
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