第32話白革の手帳
藍の一番感じる下段の引き出しから白い手帳の表紙が捲れて少しばかり耳の様にはみ出ていたのを藍が見付けてそっと、取り出して見るとそれは白革の手帳だった。
今までみたことのない白革の手帳は、豪華な煌めきを放ち白というか、銀というか、オーラのような物を感じつつ一枚表紙を捲ってみた。
書かれていたのは「秀樹さん」始まりは秀樹だった。
「おまん・・・。スズメ捕りの仕掛けを気長に・・・、ウチのためにこじゃんとしてくれゆうき、生きる望が出てきちゅうとこやったのに、なんで脳溢血なが・・・。
おまんが死んだんは冗談みたいなが・・・、
昭和五十四年、雲雀が低空飛行でホバリングしながら雌へ愛の歌を奏でていた。
ここは、国道二号線に近い垂水駅前の一本北へ入った市道ですぐそこに西方面へ暫く歩いていくと垂水駅前市場が賑やかに営業していた。
市場の入り口に魚屋が営業しておりアマダイやいかなごやらが採れ取れの状態で店先をピチピチと跳ねて行き交う人の眼を奪っていた。
時折脚を止めて魚を一盛り買って行く主婦もあった。
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