ひかりのメロディ：自らの歩み、町の語り部へ

第3話 初めてのステージ

数週間が過ぎ、ひかりちゃんはライブハウスのオーナー、田中さんの指導のもとでギターの技術を磨き続けていた。ある日、田中さんから「来週、月末のイベントがあるんだ。ひかりちゃん、ステージで一曲歌ってみないか？」と提案される。

驚くひかりちゃんは「私、人前で歌ったことなんてないし、緊張してしまうと思います」と戸惑いを見せるが、田中さんは「君の父さんも最初は緊張していたよ。でも、一度ステージの上に立つと、それが君の居場所だと感じるはずだ」と励ました。

イベントの日。ライブハウスは地元の音楽ファンで溢れていた。ひかりちゃんは緊張で手が震えていたが、ギターを手に取り、深呼吸をする。ステージのカーテンが開き、彼女の出番が始まる。

「私、ひかりちゃんです。今日は、父の思い出とともに、私の大好きな曲を歌います」と照れくさい挨拶をした後、彼女はギターの弦をかき鳴らし、歌い始めた。

最初は緊張のために声が震えていたが、徐々にその歌声は安定し、会場の人々を引き込む魅力的なものとなった。曲が終わると、一瞬の静寂が訪れ、次の瞬間、拍手と歓声がライブハウスを包み込んだ。

「ありがとう、父さん。」ひかりちゃんは心の中でつぶやいた。彼女はその日、自分の音楽を人々に届ける喜びを初めて体験し、本格的にシンガーソングライターとしての道を歩む決意を固めるのだった。