「第一話」誕生日
ボク、雨宮蒼井は今日で十五歳。
学校が終わり、皆が家路につく中……ボクだけが、家以外の別の場所で時間を過ごしていた。
「……」
建物から出て、ボクは溜め息をついた。別に悪いことがあったわけではない、むしろ今回はその逆……ものすごく嬉しいこと、ずっと叶えたかった夢への切符を、ボクは掴み取ったのである。
「受かっちゃった、『ダンジョン配信者適正試験』……!」
ポケットから取り出した免許証、配信時に使う小型ドローンカメラを空に掲げる。眩しい太陽を遮ったそれらは、ボクが叶えたかった長年の夢の具現化である。
一応は公務員であるダンジョン配信職。一時はどうなるかと思ったが、受けてみればなんてことはなかった。頭脳、肉体、そして単純なサバイバル力……実に簡単で、何なら魔力量では新記録を叩き出すこともできた。
(そりゃそうだよね、ボクは……『あの』マッスルアキヒコの娘なんだもん)
試験に合格した今、ボクの取るべき道はほぼきまっていると言っても過言ではない。父が殉じたダンジョン配信に足を踏み入れ、大きくバズる! 父のような人気者になって、父のような立派な使い魔を従えて! それで、それで……。
「……」
つい、立ち止まって考えてしまう。
あの日に、何があったのか。
(ねぇ、お父さん)
応える者などいない、そんな事わかってる。
「今、何処にいるの……?」
父のチャンネルを見ても、動画の投稿は五年前で終わっている。
そう、父の行方が分からなくなった、あの配信を最後に。
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