第2話

 森の中、それは魔性の住処と言える。色々な魔法生物が棲息している。妖精はかなり数が多く、悪戯好きな生物だ。森に住処を置いていると言っても、人里に現れないかと言われれば違う。おいしい食べ物を溜め込んでいる人間から、分けてもらう。もとい、奪うために人里に降りることもある。


 時に鳥の姿をとって人間にバレないようにすることだってある。悪戯好きなところを除けば、愛らしい見た目をする。人間はそんな姿に惑わされて餌を与えてしまうのだ。妖精も計算高い生き物だろう。


「やはり、森の中は素材が山程あるから、歩くのは楽しいねぇ」


「おっと、やっぱり食えるものがいいよな。このキノコとか」


「バカモン、それは毒キノコだよ。美味しいけど食べれば体がけいれんする恐ろしいキノコだ」


「げっ、でもヴァンピィはそれを素材に採ってるじゃないか」


「眠り薬の素材に使えるから採ってるんだよ。よく眠れて、休息を取りたい時には優れものさ」


「へぇ、物識りだね」


「基礎の基礎だよ。あんたにも教えるのはこれで五回目だ。呆れて物が言えないね」


 そんなやり取りを交わす二人の前に、小鳥が降り立つ。


「むっ、こりゃびっくりだ。私を人間と勘違いして近づいてきおった。こりゃ空の属性の妖精だな? いいね。この木のみをあげるよ、こっちへおいで」


 ヴァンピィのその言葉に、小鳥が興味を示してヴァンピィの手のひらに飛び乗る。


「ふふふ、そら血肉をおくれ」


 そう言うとヴァンピィは鳥に注射器を刺して血をとる。それを見た周りの鳥たちは逃げ出した。どうやら、先陣を切ってやって来たこの子は見捨てられたようだ。


「うわぁ、ヴァンピィ可哀想なことするなぁ。注射器なんて耐性がないと怖いし痛いだろ」


「そんなの技術があれば痛みなんて感じないものだよ。ほら、この子も気にせず木のみに夢中だ」


「ありゃ、本当だ。毎度思うが、ヴァンピィは不思議なことをするもんだな」


「いやいや、これも魔女の技の1つさね。死なない程度に摂るのが肝要さ」 


 妖精は木のみに満足したのか、ヴァンピィの手から飛び去り仲間の後を追って森の奥へ逃げていった。


「はぁ、今日の妖精の血はこれくらいにしておくかね」


「全く、相変わらず疲れやすいな。ヴァンピィは」


「魔女に体力を求めるんじゃないよ。魔力は飛び抜けて有るんだから問題ないんだよ」


 軽口を交わす二人は、湖畔にある屋敷へと踵を返した。二人共、今日の仕事は終わりとばかりに軽い足取りである。

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