魔女と傭兵の魔王改造計画
雨髮玲人
第1話
静かな湖畔その傍らに、魔女の家はあった。魔女と言っても何も無いところから有を生み出すことはできない。魔法を使うには杖と、自然の力と順応する心が必要だ。これを魔女はリングマジカルと呼称する。それにも増して、魔女は血筋を重んじる。
力は血に宿ると識っているからだ。魔女も家系によって依代が違う。例えば蜘蛛の力を借りる魔女もいれば、人魚の力を要する者もいる。様々な力の根源を覗く魔女、それが彼女。魔砲使いのヴァンピィだ。
魔砲の筒で創られた杖代わりの、鉄砲。銃弾に依代の血肉を塗りたくる。その秘術は他の魔女にも使えない事は無いが、彼女より得越した者はいない。ヴァンピィは吸血鬼の血筋の御業を使っているからだ。
そんな彼女には、相棒がいた。彼女よりもずっと歳下の剣術使い。傭兵志望の幼子だ。彼女は赤ん坊の頃に山に捨てられていたところ、ヴァンピィが拾って育てている、まぁ、親子のような関係の子だ。名をシエルという。負けん気の強い敏い子である。
「ヴァンピィ、今日は何する?」
「そうさね、今日は魔砲の弾の素材集めに妖精狩りと洒落込もうかね」
「げっ、妖精かぁ。わたしの剣じゃ通用しない相手だ。困ったな」
「あんたもいい加減、女らしく魔法の修練でもすればいいのに。男勝りに剣なんて握るとは敏いようで、おバカさんだね」
「良いじゃないか。女だてらに、男に勝る剣捌きを魅せる。わたしの目標だもんよ」
「はぁ、柔の剣なんて極めるには何年あっても足りないよ。少しは魔法の勉強すれば、寿命を伸ばす妙薬の手解きをしてやっても良いんだがね」
「わかっちゃいねぇなヴァンピィ。寿命なんて考えないで太く短くがわたしの性分さ」
「かぁー、拾ってやったのが間違いかね。魔女として教育したはずがなぜこんな脳筋な子に育ったものかね」
「うるせいやい、さぁ。妖精狩りに早く行こう」
「はいはい、苦手と言う割には妖精狩りに賛成かい? まったく、少しはマシな妖精を狩りなさいよ? これだから、魔女の血のない子を育てるのも大変だってものだよ」
「小言が多いな、これだから年寄りは」
「あ? 歳がなんだって?」
「いえいえ、こちらの独り言ですよっと」
そんな二人は、喧嘩しながらも湖畔から森のある方角へ歩いて行く。息のあっていないようで何年も一緒に居れば、息も合うというものである。
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