第7話 世界の危機です?
また魔力が吸収されるような感覚がします。手を当てて十秒ほど経った頃でしょうか。私のスキルが板に浮かび上がってきました。
タブレットと違うのは、画面が暗いままで緑色の文字が浮かび上がったところでしょう。タブレットのことを知っている人は一握りでしょうけれど。
「種族特有のスキルは永久記憶と並行思考。いいスキルじゃん。一応説明すると、永久記憶は全ての記憶を覚えることができるスキルで、並行思考は並列思考の上位スキルになる。完全に一度で二つのことを考えることができる。その人のポテンシャルにもよるけどな」
「永久記憶があるならすぐ魔法を覚えられるのですっ。並行思考もあるから、古代魔術も覚えられるかもっ」
「可能性はあるのです。ご主人様の頑張り次第なのです。それに並行思考があるなら、同時に二つの魔法を発動できるのです。ご主人様の訓練はあの人に任せるのです」
魔法のことがわからないので、なんとも言えません。ですが、期待には応えたいですね。
永久記憶も並行思考も役に立ちそうです。それにしても、私の訓練を任せる人とは誰なのでしょう。
「ああ、あの人か。ちょうどいいかもな。弟子ほしいって言ってたし。なあ、ふと思ったんだけど。この板でスキルの統合できたよな?」
「そうだったのです! 忘れていたのです! 表示されているスキルを移動させるのです。次は統合したいスキルに重ねるのです。スキルの統合が完了したのです」
〈魔力循環を取得しました。取得条件は魔力操作と魔力感知を取得し、統合することです。魔法が格段に使いやすくなります。又、魔力消費を抑えることができます〉
魔力消費を抑えることができるのは良いことでしょう。ほかのスキルも相性によると思いますが、統合できるのでしょうね。面白そうです。
〈ワールドアナウンスです。プレイヤー名ノウィルの統合スキルの取得により、統合スキルの概念が増えました。二つのスキルを統合し、一つのスキルにすることでスキルの効果が上がります〉
またアナウンスが流れましたよ。先程から私の名前だけしか流れていないような気がするのですが、気のせいでしょうか?
「それにしても、アルカナってスキルなんなのです? 聞いたことないスキルなのです」
「確かにっ。私も聞いたことないですっ。でも、アルカナってセフィロトの樹の番人を指す言葉だよねっ?」
〈エクストラクエスト〝セフィロトの樹の封印を解除しよう〟が発生しました〉
セフィロトの樹はユダヤ教の神秘思想カバラにおいて、図形化された世界創世の象徴とされています。
補足しますと……セフィラと呼ばれる十個の球体と、二十二本の小径――タロットでいう大アルカナにより図形化された世界創世の象徴のことです。
今はもうほとんど知られていませんが、偶然にも取り寄せた本の中に書かれていたのですよね。知らなかったらどうなっていたのでしょう。
「セフィロトの樹は封印されているようです」
「だ、駄目だよっ。セフィロトの樹が封印されてたら、世界が滅びるっ!」
こちらでも同じような扱いなのでしょうか。クエストが発生したということは時間があまりないでしょう。
ゲームですし、世界が滅びることはないでしょう。ですが、なんらかの障害が発生するでしょうね。早めにクエストをクリアしなくてはいけません。
「アルカナを呼び出せば封印の解き方がわかるのでは?」
「わからないのです。でも、セフィロトの樹は温室にあるのです」
「見に行こうか。セフィロトの樹が枯れたらって想像するだけでヤバイ。前に枯れかけたことあってな、そんときはもうほんとヤバかった。空は真っ赤に染まって、海が真っ二つに割れるわ…火山は山が壊れる勢いで噴火するし」
私がクエストをクリアしないと、想像以上に怖い展開が巻き起こりそうです。それにしても、セフィロトの樹が温室にあるとは。驚きを通り越して、呆れてしまいます。
「では、出発なのです。えいえいおー、なのです!」
カエルムの〝えいえいおー〟が可愛いです。ウェスペルも〝おー〟のところで手を上げていて。可愛さの多量摂取で気絶してしまいそうです。
「あっ、そうだ。統合したスキルはそのままスキル名を言えばいいぞ」
「わかりました。教えてくれていありがとうございます、ノクス」
ノクスが満面の笑みで親指を立てています。カエルムとウェスペルはもともと可愛いですが、ノクスも可愛いなんて。反則です!
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