第20話 約束
病室の中は静かだった。校長先生と看護師さんが控えめに距離を取る中、私は先生の笑顔に救われたような気がした。久しぶりに見るその表情は、心に温かさをもたらした。
「A、心配していたけど、良かった。元気そうで。」と先生が話し始めた。
私は言葉が出てこなかったが、とりあえずニコッと笑って見せた。
それを見た先生は微笑んだ。
「でも、無理はしないでね。焦らずに、少しずつで大丈夫だから。」
「でも…」思わず否定しそうになったが言葉を止めて、濁らせた。
「学校に行きたいって思ってくれてるならそれだけで俺は嬉しいよ。」先生の声は優しさに満ちていた。
「先生が待っていてくれるなら…頑張る気がします」その言葉は、私の心の奥から自然に出てきた。
「もちろん、待っているから。」先生は私の手を優しく握りしめてくれた。
その瞬間、私は自分の中で何かが決まった気がした。先生との約束を果たすために、どんな辛い時も乗り越えていこう。そう思うと、少しだけ心が軽くなった。
私たちの間には、確かな信頼と約束が結ばれたように思えた。
校長先生が時計を確認すると、「そろそろ戻ろうか」と言う。そして私たちの会話に微笑みを浮かべながら退室の準備を始める。先生も立ち上がり、私に向かって深く頭を下げた。
「また来るからね。Aのことを思って、待っているから。」
先生のその言葉に私は頷いた。
その日、私は先生との約束を胸に抱え、また新たな一歩を踏み出すことを決めた。少しずつ、少しずつ、元気を取り戻していこう。私の未来には、必ず明るい光が待っているはず…。
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