『先生』目線

中学2年生編―秋

第1話 初めての出来事

 夏休みが終わって初日、眠い目を擦りながら俺は電車へと乗り込んだ。

 電車に揺られながら、見える外の景色がいつもより明るく見えた。久々にクラスのみんなに会えることに喜びを感じていた。夏休みに沖縄に行った事をみんなに言いたくて仕方がなかった。

 学校に着いて、自分の机に荷物を置き、パソコンと教科書などを持って教室に向かった。教室に向かう途中で、


―キーンコーンカーンコーン―



チャイムが鳴り響くと同時に、他クラスは朝の会が始まった。自分のクラスは少し始まるのが遅くなった。


「おはようございます」


みんなが元気に挨拶をする中、1番前の席のAは相変わらず声が小さい。夏休みをあまり楽しめなかったのだろうか。


そして、俺の話す時間がやってきた。クラスの中でおそらく一番明るい生徒であるKとNは相変わらずのリアクションで話を盛り上げてくれるに違いない。

そんなことを考えながら、







「あと、今年は沖縄に行きました。」










と俺は言った。

案の定、話は盛り上がっていた。そして何よりも驚いたのが、いつも俯いて話を聞いてくれないAが、こちらを向いて話を聞いているのである。おそらく“初めて”と言っていいほどに珍しい事だった。俺はそれが少しどころか“凄く”と付けていいほどにうれしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る