第16話 願い


「お前、ここでちょっと待ってろ」



Kが私の頭を放すとトイレの外へ駆け出していった。なんとか一命を取り留めたようだ。私は少し安心した。するとトイレの外から、先生の声が聞こえた。




「こんなところで何しているんだ〜?そろそろ整列するぞ〜」



いい奴面しているKの声も聞こえる。



「すみません〜、ちょっとAさんが居なくなっちゃったので探しに行ってたんです〜」


なんて最低な奴なんだ。こんな面してるから、みんなKが正しいと思っているんだろうな。



「で、見つかったの?」


そんな先生の質問にKはどう答えるのだろうか…?



「いや…それがまだ見つかって無くて…トイレにも誰もいなかったんですよ…」


うわ、なんていう答えなんだろう。嘘をつきまくってるじゃないか。


「じゃあ俺が探しておくよ、整列は学級委員がやっておく話だからさ」


さすが先生!わかってくれている!と思ったその時だった。












「いや、ここは私が探しておきます。学級委員としてクラスのみんなを誰ひとり残さず大切にしたいんです」












私は呆然とした。Kの醜さに腹が立っていた。今この場を抜け出して、2人の所に飛び出せば、なにか変わるかな?

でも私にはそんな勇気など1ミリも無かった。だから今は先生が来てくれることだけを願っていた。結末が恐くなって耳を塞いで目を閉じた。

先生、お願い、Kに騙されないで…。





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