第16話 願い
「お前、ここでちょっと待ってろ」
Kが私の頭を放すとトイレの外へ駆け出していった。なんとか一命を取り留めたようだ。私は少し安心した。するとトイレの外から、先生の声が聞こえた。
「こんなところで何しているんだ〜?そろそろ整列するぞ〜」
いい奴面しているKの声も聞こえる。
「すみません〜、ちょっとAさんが居なくなっちゃったので探しに行ってたんです〜」
なんて最低な奴なんだ。こんな面してるから、みんなKが正しいと思っているんだろうな。
「で、見つかったの?」
そんな先生の質問にKはどう答えるのだろうか…?
「いや…それがまだ見つかって無くて…トイレにも誰もいなかったんですよ…」
うわ、なんていう答えなんだろう。嘘をつきまくってるじゃないか。
「じゃあ俺が探しておくよ、整列は学級委員がやっておく話だからさ」
さすが先生!わかってくれている!と思ったその時だった。
「いや、ここは私が探しておきます。学級委員としてクラスのみんなを誰ひとり残さず大切にしたいんです」
私は呆然とした。Kの醜さに腹が立っていた。今この場を抜け出して、2人の所に飛び出せば、なにか変わるかな?
でも私にはそんな勇気など1ミリも無かった。だから今は先生が来てくれることだけを願っていた。結末が恐くなって耳を塞いで目を閉じた。
先生、お願い、Kに騙されないで…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます