第12話 高鳴る鼓動
ガチャ
「すみません、遅れました」
傘を探すのに時間を使いすぎて、授業時間より少し遅れてしまった。だけど、
「良かった、来てくれたんだね」
先生は暖かく出迎えてくれた。先生は続けて言った。
「今日もAだけみたいだから、のんびりやろうか」
そう言って、あの頃と同じような授業が始まった。この時間が私は唯一の癒やしだった。
そして、補習授業が終わった。窓の外に目を向けると…
ザーザーザーザー
土砂降りだった。私はため息を付いた。その時先生は言った。
「あれ?朝、傘持って来てたよね?」
私は言葉が出なかった。「盗まれた」って言おうと思っていても、先生には心配をかけたくなかった。私は何も言わずに部屋を出ようとした。その時、
「昇降口で待っててくれる?」
と先生が言った。私はどういう意味かよくわからなかったけど、とりあえず頷いて、部屋を出た。
昇降口に着いて数分後、先生が職員室の外玄関から一本の大きな傘を指してやって来た。そして先生はこう言った。
「さぁ、おいで」
私は高鳴る鼓動を抑えながら、傘の中に入った。躊躇なんてしてられなかった。だって、土砂降りの中1人で帰ったほうが、よっぽど先生に迷惑な気がしたからだ。特に会話をするわけでもないけど、どこか温かい雰囲気が感じられた。
そしてそのまま先生は私を家まで送ってくれた。私は一つ礼をしてこう言った。
「ありがとうございます」
先生はそっと微笑んで、
「どういたしまして」
と言った。そして先生はその場を去っていった。不思議なことに、まだ鼓動は高鳴り続けていた。
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