中学2年生編―冬

第11話 盗まれた傘

「これで完治いたしました。明日からいつも通りの生活が送れますね。」


そう保健室の先生から言われたのはもう12月の半ばだった。結局、文化祭にも参加できず、ただただ治療に専念するっていう時間が流れて…冬になったのだ。あの日以降、先生とも会っていなかった。



完治してから初日。教室に着いても誰ひとり目を合わせることもなく、ただ時間が流れた。いつも通りのことだった。でも私は自分に言い聞かせた。「もう私は一人じゃない」と。そんな感じで数週間が経った。



ある雨の日のことだった。夕方に大雨が降る予報だったので、わずかな財産で買った傘を持っていった。いつも通り、授業を受けて補習授業に行こうと荷物をまとめたその時だった。








傘が、ない







   



傘立ての前で佇む私を高々と笑うKとNの声が聞こえた。私は補習授業が終わる頃に少し雨脚が弱まると願って、補習授業に向かった。

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