第4話 口ぐせ

放課後、戸締まりのために校舎内を巡回していた。


「あ!先生〜!」


個別支援級のSが話しかけて来た。


「先生聞いてください!この前ポスターコンクールで金賞を獲ったんです!」


確かにSは美術部だったっけ。あんまり興味はなかった。


「そっか、良かったね」


俺はそう言うと、Sは嬉しそうに帰っていった。


放送室の横を通り過ぎようとした時、何か物音が聞こえた。誰かまだいるのか…と思って、扉を開けた。



 


ガチャ―






  





ドアの向こうにはAがうずくまっていた。Kに何かされた??と一瞬思ったが、そこにKの姿はない。答えてくれるかも…と思って、そっと声をかけた。





「何か、あったのか」






Aは目を合わせることもなく「大丈夫です」と言って、部屋を出ていった。








Aから出たその言葉は以前からのAの口ぐせだった。「大丈夫」という言葉…。

そうだと分かっていたのに、なぜ疑問形で声をかけてしまったのだろう…。俺はそれを強く後悔した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る