第8話 帰る場所
誰かの話し声で目が覚めた。
私は不思議に思った。
ここは…家じゃない、病院でもない。
確かに今思えば、昨日も病院にいなかったよな…?家に帰ってないのか?
頭がこんがらがって現状を理解しきれなかった。
「おはよう」
誰かの聞こえた。よく分からなかったけど、多分…先生だろう。ただ私はふと思った。
親はどこ?
その時、先生(多分)が続けた。
「君の両親はAを置いてこの国を出たらしい。」
電気が走るかのように、鳥肌が立った。その時私は我に返ったのか、今までのすべてを思い出した。改めて見ると身体中が傷だらけだ。だから病院でも、家でもないこの場所で横たわってるということか。ギリギリ視界に入る時計を見ると、8:00を指していた。日めくりカレンダーには(土)と書いてある。つまり、私は帰る場所を失って居座っているということか。そして、私は思わず口からこんな言葉が出た。
「ありがとうございます」
普通の言葉であったが、私からしたらまずあり得ない言葉だった。無意識のうちに言ったものだから、自分でも実感がなく先生がどんな表情をしているのかも分からなければ、顔を見ることも出来ない。
そんな事を考えていたら、チャイムが鳴った。恐らく、部活動開始のチャイムである。それと同時に吹奏楽部の練習音が響き渡る。2週間後に迫った文化祭に向けて準備しているのだろう。私は帰宅部だからあまり関係ないけれど。
その時ドアが閉まる音が聞こえた。多分先生が部活動の様子でも見に行ったんだろう。というかそもそも、こんなところにずっといれるわけ無いだろうし。
そして今度はドアが開く音がした。
「大丈夫???」
駆け寄ってきたのは、保健室の先生と唯一の友達であるSさんだ。私の顔を見たSさんは悲しそうな顔をして、
「Aちゃん…」
と言って泣き崩れた。私はまともに体を動かせないから反応ができなかった。Sさんは個別支援級で学校生活を過ごしている。恐らくSさんは私を個別支援級に誘いに来たのだろう。私は正直言って、どうでも良かった。そして今の私は周りにいる人々のすべてが敵に見えてしまい、何故かSさんのことすらも嫌いに感じてしまった。
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