第17話 最高の新生活

 瑠海との新たな生活が始まって一週間が経過した。

 新居で暮らす日々は、毎日が幸せ。

 トラブルもなく平和そのものだ。


 通り魔事件も解決し、治安も回復。これからは何の障害もなく、暮らせる。


「隼くん、今日はお休みだし、どこか行こうか」

「せっかくの日曜日だからね。デートでもしよっか」

「うん、名案! 映画とか水族館とかどう~?」

「いいね。瑠海の行きたい場所についていく」

「ありがとう。じゃあ、両方で!」

「そうしよう」


 思えば、瑠海とまともにデートしたことはなかった。

 今日なら暇だし、邪魔者もいない。


 そう思っていたが――。



 チャイムが鳴り響いた。



 ……誰だ?



 通販を利用した覚えもないし、来客予定もないはずだ。居留守を使うわけにもいかないので、俺は玄関へ向かった。扉を開けると、そこには意外な人物が立っていた。



「久しぶりだな、隼」

「お……親父! なぜここに」

「場所は瑠海さんから聞いたんだ。それより、隼、新しい生活は順調か?」

「まあな。瑠海は俺のこと好きだし、俺も瑠海が好きだ。ラブラブすぎて怖いくらいだよ」

「なるほど、生活に問題はなさそうだな。だが、お前は一応まだ高校二年生だ。学校にこのことが知れたら面倒だ。気を付けて生活するんだぞ」


 瑠海と同棲をはじめて一週間。

 そういえば、このことを学校に伝えてはいない。その必要が無いと思っているからだ。

 けど大丈夫だ。

 実年齢は20歳を超えている。

 俺も瑠海もとっくに“成人”なんだから。

 責任ある大人というわけだ。


「忠告感謝するよ」

「それと朱音だが……。アイツは女子少年院へ送られた。しばらく出てくることはない」

「そうか。でも、それで正解だ」

「ああ、あとのことは私が何とかする。お前と瑠海さんは静かに暮らせばいい」


 親父は俺と瑠海のことを理解してくれる。応援させしてくれていた。ありがたいことだ。


「悪いな、親父」

「構わん。そもそもお前は『五年』という貴重な時間を失った過去がある。私はね、隼……お前になにもしてやれなかった。ただ見守ることしかできなかった……。だから幸せになって欲しいのだよ」


 それが本心であると親父は、俺の肩に手を添えた。そう思ってくれるのは嬉しい。俺と瑠海の生活にも援助してくれているし、助かっている。いつか恩返しをしないとな。



「ありがとう」

「うむ。それでは私はそろそろ帰る」

「元気でな、親父」

「ああ、またそのうち様子を見に来る」


 背を向け、親父は去っていく。

 最後まで見送ると同時に、仕度を終えた瑠海がやって来た。


「お待たせ、隼くん。……あれ、どうしたの?」

「さっき親父が来ていたんだよ」

「そうだったの!? 挨拶したかったな」

「また来るってさ」

「じゃあ、また次回に」



 それにしても、瑠海の今日の洋服は可愛いな。クラシカルガーリーなお嬢様系でとても似合っている。背の低い瑠海にピッタリだ。


「瑠海、可愛いよ」

「ありがと。このお洋服、お気に入りなんだっ」


 手を繋ぎ、俺たちはまず、市内にある水族館へ向かうことにした。

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