第11話 謎の感覚と能力

 相変わらず、俺は吹っ飛んでいた。

 どこかを強化すれば、どこかが壊れる。

 速度と、反応はこれでもまだ、抑えているということだ。


「駄目だぜこれ」

 走ってきたスタッフに、苦情とも言えないぼやきを聞かせる。


「質量がなあ、強化をすると重くなる。重くなればさらに負荷が掛かるから、ねじれや支点部分が限界負荷を超えちまう」

「こんな、アングルみたいな骨じゃなく鋳物で良いからブロックにすれば?」

「それをすると、すごく重くなるぞ。でもまあ、一体成形か。ブロック削り出しで造って、肉抜き」


 うむむと悩みながら、彼は本部テントへ戻ってしまう。

「助けてくれないのかよ」

 何とかまあ、フレームから這い出してくる。


 俺も本部へ行くと、喧嘩中だった。

「新世君。一週間休みだ。フレームを作り直す」

「はっ?」


 周りでスタッフが、頭を抱えていますが良いんでしょうか?

「分かったね。お疲れ」


 そう言って、追い出された。


 やることもないので、家へと帰る。

「じゃあお疲れ、出かけるときには連絡をするよ」

 館野と別れて、部屋へ入る。


「お帰りなさい」

 そう言って、彩佑が迎えてくれる。

「ただいま。ひどいことに一週間休みになった」

「あら、それじゃあ。ゆっくりできるわね」

 そう言って、微笑んでくれる。


 それからの、一週間。買い物に出る以外は二人は何かを埋めるかの様に求め合った。

 その中で感じた繋がり。

 彼女が寝ているときに、不意に頭に浮かぶ悪夢。

 俺はその中に乱入して、高校生だろうか? ガキどもをぶん殴ると、拘束されていた彼女を救い出す。

 そんな夢を見た。


 翌朝、目が覚めると、俺に抱きつき彼女が泣いていた。

「どうした?」

 そう聞くが、彼女はじっと人を見つめ。

「ありがとう」

 そう言って、ダイニングへ向かう。


 それ以降、なんとなく彼女がいるところを感じる。

 繋がりというものだろうか?

 聞くと、彼女もなんとなく、繋がりを感じるらしい。


 そして、それ以降。何かの力に目覚めた様に、俺は超能力が使える様になった。


 意識をすれば、思ったところに物理現象が起こせる。

 水が欲しいと思うと、目の前に水が浮かぶ。

 意識して、制御をしないと、大変なことになりそうだ。

 彼女も試すが、できないようだ。


 だけど、エイメスが言っていた言葉。

 神経の接続を補うために君に埋め込んだプラント。

 それは、意識を具現化する。


 そう言えば、挿管されていた管を抜管後、声が出せなかった時に、意識を繋ぐ実験をしたな。

 考えれば、あれも超能力じゃ無いか?


 そう言えばあれから、憑きものでも落ちたかの様に彼女の表情が穏やかになった。きっと何かがあるのだろうが、言ってくれるまで待とう。

 いや、なんとなく分かっている。

 あの夢は、きっと現実なのだろう。

 夢の時には、介入したが、しなかった場合どうなったか、想像できる。


 その時俺は、その事に思い至ったために復讐を決意する。

 彼女は望まないだろうが。


 そして、ただれた生活から現世へと戻る。

「さあ、新型だ。あんたのおかげで、一週間寝ずにフレームから設計し直した」

「その言い草はひどいな、あんたらの上司命令だろう」

「そうだけど、新世が壊すからだろう」

「壊れるのが悪い」

「だあー。まあ乗ってくれ。衝撃の緩衝システムも手直しした」


 そうして、テストを始めて、また俺は吹っ飛んで転がる。

 今度は壊れたのでは無く、踏ん張りがきかず。滑って転んだ。

 足の裏に、引力的なフィールドを発生させて、地面を掴む様だが、その限界を超えた。


「仕方が無い。これはまあ、設定で調節できる。ほれ、これで大丈夫」

 わずか数分で、調整が終了して、乗り込む。


 わずかに、動きが重くなった?

 走るのは、大丈夫。

 そして、鬼門の反復。


「どっわぁぁ」

 足は確かに掴んだ。だがそれに上が付いていかない。めくれて吹っ飛ぶ。


「どうがんばって重心を落としても、めくれて飛ぶぞ」

「もう、どうしようも無い。動ける範囲で動いてくれ。足のフィールドはちょっと緩める。滑る方がましだからな」


 結局、反復横飛びは諦めた様だ。


 その後形になり、外装が装着され、装備として実践に投入されることになった様だ。


 日本軍、機械兵団。

「対モンスターでは、怪我や噛まれるだけでリスクだから、体を囲う必要があった。だが囲うと装備の重量で思う様に動けない。そのため開発されたのがサポートアーマーだ。諸君の活躍を期待する」

 大々的に発表し、正式採用が決まった。


 だが、その一月前。

 俺のテストが終了して、候補生達は涙と自身のキラキラ地獄、悪夢の様な三週間を乗り越えた。

 改良しても、振動とGは凄いんだよ。

 きっと、宇宙飛行士なみのGが、移動をするたびに別方向からやってくる。

 ものすごく、過酷な環境。


 レースをやっていた俺でも、経験したことが無い世界だからな。

 いやイメージとしては、タイヤバリアに突っ込みながら走る感じだろうか? 壁に沿って走る、小さな4駆に実際乗ったらこんな感じじゃ無いだろうか?


 とにかく、頑張れ。

 心の中で応援をしながら、隊列を組む隊員を見送る。

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