第二章 人類復活計画

第7話 戸惑いと力

 その時俺は、焦っていた。

 久しぶりの車。


 『先進技術により、君は蘇り強化された』

 散々先生はそう言っていたが、俺は、以前の自分には、及ぶべくも無いと勝手に思っていた。


 車は、タイヤの限界を超え、滑り始める。

 ステアリングの舵角と、アクセルの調整でスピンを回避。

 そのまま、コーナーを抜けていく。


 ブレーキングからの、荷重移動でミスった。

 どアンダー。

 ハンドルを切っても、曲がらず。

 真っ直ぐエスケープゾーンへ向けて進んでいた。この状態、普通なら何もできない。

 だが意識的なものか、全体の速度がゆっくりになり、調整ができる。

 サイドブレーキは、ボタンか。畜生。


 一瞬だけ舵角を戻し、グリップさせた。

 ブレーキで、多少ロスを発生させる。

 

 ステアリングをこじて、懐かしのタックイン気味にリアを振り出す。

 それにより、ブレーキが掛かる。失敗すれば転がるけどな。


「どひゃー。やばかった」

 いつもより遅く感じて、突っ込みすぎた。

「タイヤのせいか?」

 スラロームさせながら、熱を入れつつタイヤの状態を感じる。


〈おーい克己。さっきのはなんだ? やっと退院したのに死ぬ気か?〉

「いや、そんな気は無いが、遅い感じがして、突っ込んだら意外と早かった。どアンダーだ」

〈恥ずかしい奴だな。それと、タイヤは低燃費用タイヤだから気を付けろ〉

「そんな事は早く言え。これブレーキバランサーはどこだ?」

〈レビュー用の新車に、そんなもの付くかぁ〉


 そう、リハビリも兼ねて、最近の車。レビュー用の車を借りてきた。

 タイトルは、全開燃費対決。

 燃費の良い車。サーキット全開でどれが持ちが良いか。

 むろん充電時間から全部のせ。


 満充電状態から、サーキット全開五周を走り、充電完了まで。

 普段買い物に一回乗って、三十キロメートルくらいだろ。と言うことらしい。

 そんな奴は、あまりいないだろうと思いつつ。口には出さない。

 それに、全開だよな。そんな奴もいねえよ。

 どこの企画だよ。


 初っぱなはミスったが、その後からは、なんとなく限界が分かった。

 トラクションコントロールに、アンチロックブレーキステム、各種安全装備がやかましいし鬱陶しい。勝手にステアリングを持って行くんじゃあねぇ。


 そんな事を叫びながら、走っていると、インカムが拾ったらしく、記事にすると言われた。かなりやばいことを言っていたようだ。

 スポンサーにばれたら干されるんじゃないか?


 だが、サーキットだからフリーだけど、今時一般道は、ナビリンクのフルサポート。乗り込んで、目的地をセットして座っているだけ。

 大体駐車場にも、大抵非接触式充電器が付いている。

 高速など、全線、充電対応だ。


 車の充電に関しては、車に付けられたインジケータから、通信で充電量が通知され、段階式の定額が主流になってる。

 最悪でも、充電ステーションで、バッテリーパック交換であっという間に交換できる。

 おもちゃの様に、リア側、床下がガバッと開き、差し替えることができる。



 まあそんな、あほなことを考えながら、ひたすら周回をする。

 オフレコだが、全開と言いながら、時計はオーダーがある。


「お疲れ。どうだ体は?」

「今のところは、問題ないな」

「克己。良かったな」

「ああ。ありがとう」


 サーキットの外から、そちらを見ている男が二人。

「こちらアルファ。対象問題なし」

「本部。了解」


 今年のシーズンは、何もできないため、スポットで仕事を受ける。

 後は、工場の手伝い。

 マシンのセッティング。それと試走。


「どうですか?」

「サイバー部隊。良いね。一般隊員の三倍くらいの力が出ている。ゴブリンやウルフ系なら追いかけ回すことができる」

「オークやオーガはどうです?」

「一応、ワンパンらしい」

「それは良かった」


「国民には、結果が良ければ派遣の真実を伝えよう。海軍と揚陸の手はずはどうなっている」

「終了しています。元々監視は行っていましたので、問題ありません」

「良し。始めようか」



「今日は、マシンテストって聞いていたのですが、此処陸軍ですよね」

「ああ、そうだな。タイヤは付いていないがきちんと走る」

「それで何を?」

 ぺらっと、紙が渡される。


「千メートル走、反復横とび、走り幅跳び、砲弾投げ、シャトルラン。体力測定でしょうか?」

 そう聞くと、ギロッと見てくる。


「まあ、そうだな」


 その時、俺の体力テストをして、何かのマシンテストを行うのだと思っていた。


「なんですか、これ?」

「歩兵用、サポートアーマー。タイプ01型。前がこちらで、背中側に入り口がある」

 金属フレームに体を押し込む。

 全身が、一回り大きくなる感じ。


「まだフレームだけだが、基本性能は問題ない。使い方は、普通に動くだけ。イメージは体が、一・五倍大きくなったと考えろ。では、グランドに行って始めてくれ」


 国は、鳴り物入りで送った、サイバー部隊を全滅させた。

 最初は良かったが、奥地に行くと、とても同じとは思えない個体が出てきた。

 同じゴブリンだが一回り大きく、素早い。

 ウルフ系も、体の大きな個体が、群れを引き連れ襲ってくる。


 そこまでで、部隊は、罠にはまり囲まれた。

 そこで、人間の直接強化は、前回計画で終了して、アシストロボットを使用することにした。

 サイバー部隊で、ロボットを操作する。

「これなら、何とかなるでしょう?」

「さあ、どうかな?」

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