第6話 巴里の夜明け

「あれ? あれ燃えているのは手前だぜ」

 俺達はランス近郊から、巴里に向けオートルートA4を移動している。


 南北に走るD1上に、バリケードを設置して、派手に火炎放射器とナパームをばらまいている。

「お偉方も、とうとう切れたな。葡萄畑がこの辺りにもあるだろう。」

「ああまあ、そうだろう。まごついていれば他の国と同じ、国民全員ゾンビだ」


 当然、目の前にもバリケードがある。

 空軍も隊列を組んで走っているトラックには、ナパームを落とさなかった。


「周りには、何も居ない。今だな」

「おーい。通してくれ」

「どこから帰ってきたんだ?」

「ランスだ。攻撃に行って帰ると、基地がなくなっていた」


「そりゃ大変だ。今開けるから、後部警戒をしておいてくれ」

「了解」


 何とかバリケードを越して、中へ入れて貰う。

 ところが、あまり手放しで安心できない。奴らは痛がらないし、ウルフ系は、隙間を通るようだ。

 まあ一度、どこかで報告をしないと駄目だな。



 武器と、食糧補給ができる本部を聞く。

 するとふざけたことに、ソアソンだそうだ。北へ三十キロメートル近い。


「もう巴里へ帰ろうぜ」

「同感だ」

「帰るか」

 皆と話し合い、オートルートA4を、巴里に向け移動することにした。


 ここに居る奴らは、見張っていて、ゾンビが見えたら指示を出すだけだ。

 すぐ横に、工場があってそこから、ヘリが飛んでいる。

 ちなみに、トラックは引っ張り出したディーゼル車。

 異変が始まりすぐに給電が止まり、EVは終わってしまった。給電車を出すかと言ったが、それなら、ガソリン車を出せと言ってまとまった。ジュラカンを満載して、一応燃料はガソリンと、軽油を積んである。

 基地も、発電機がフル回転だ。


 どうしてこんな事になったのか?

 送電施設は大体辺鄙な位置にあり、最初に襲われた。

 町中に、原発でもあればよかったのだろうが、今更だ。

 金持ちは、EV用の発電パネルを設置しているが、アパートじゃ駄目だ。



 彼らが、安心した頃。

 ブルガリアや、ウズベキスタン経由でモンスター達は、侵入。侵略地域は広がってきていた。


「撃て撃て撃て」

 こちらは、休憩が必要だが相手には必要ない。

 もう三日、この場所に缶詰め状態。


 ウズベキスタン側では、すぐにバリケードの設置と地雷が埋設された。


 どこかからの情報で、火炎放射器が主要装備。

 それと、弾頭の付いた小型ドローンが運び込まれる。

 意外と、小さな標的は難しい。ドローンで確実に当てる。

 中には、地雷を搭載した、ラジコンカーも作成した。

 後は意外と、投石用カタパルト。

 何でも使った。


 落とし穴に尖った杭や火を放つ。

 モンスターは駄目だが、以外とゾンビに効く攻撃は多かった。


 そんな情報は、共有され広がっていく。

 こうして、いがみ合っていた各国が、共通の敵を通じて仲良くなっていく。


 数年後に、武器として使おうと、愚かな国がわざわざ持ち込むまで、封じ込めは成功していた。


 そうしてアジアの大部分は、支配の空白地として、取り戻す地、人類の夢その他、色々な名前で呼ばれるようになる。

 一部の民族が張り切っていたが、被害が大きく諦めたようだ。



 さて、その頃フランス軍は、盛大に焼き払いながら、防衛戦を押し戻していく。

「めざせ、ライン川。遮るものはモンスターだけ」

 隊長が、凄くはじけている。


「奪還したら、貴族にでも任命されるのでしょうか?」

「いや、さすがにそれはないが、今は権利者の居ない土地。少しくらい土地をくれるのじゃないか? 貰ったらドメーヌを開く」

「ブルゴーニュ以外じゃ、ドメーヌと言わないのでは?」

「シャトーはボルトーか。まあいい。畑を作る。そして浴びるほど飲む」


 そんな景気の良いことを言いながら、どんどんと押し返していく。

 そして、基本的にゾンビは倒したら焼けという命令が出てきた。

 動物が、囓ると、ゾンビになる可能性があると言うことらしい。


 生き物? が相手のため、少しずつバリケードを進めていく。通してしまうと、中で繁殖する。すると元の木阿弥だ。


 兵達は頑張り三百キロメートル以上を二年程度。

 毎日、五百メートルを解放していった。

 そして、ついにライン川まで到着した。


 実は、対モンスター用レーダーが開発されたのが大きい。

 超音波と振動を組み合わせ、移動したものをマークする。

 元々は、車の対人センサー、マイクロ波ドップラーセンサーを元に開発したものである。

 こちらの移動速度、それ以外の移動を検出する。


 それを装甲車へ搭載して、先を進み、その後ろに、壁を引きながら移動する専用車を開発。

 そう言っても特殊なフックで引っ張るだけ。

「行けー行けー行けー」

 叫ぶ、隊長。


 そう毎日毎日同じ作業。でも気が抜けない。

 非常に、精神を消耗させる。


 そして、辛かった作業も一段落。

 一応、壁を造る予定らしい。


 そんな努力も、馬鹿な国がすべてを台無しにする。

 ちょっと、敵国に武器として使っただけなのに、事件が発生する。

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