雷騰雲奔
俺の友人はちょっとヘンだ。とにかく忙しない。朝から晩までスケジュールを詰め込んで、分単位で行動している。何がそんなに彼を忙しくさせるのか、彼がどんな仕事をしているのかは知らない。聞く暇がないから。
忙しいにも関わらず、友人とは一週間に一度は会っていた。なぜなら、家が隣だからだ。
毎週土曜日の朝十時。友人は俺の家のインターホンを鳴らし、俺がドアを開けると直ぐに「よっ!」と玄関まで足を踏み入れ、プラスチックの弁当箱を渡してくる。
彼は料理が好きなのだろうか。しかし、その中身は毎回唐揚げ弁当だ。独身一人暮らしの俺にとっちゃ、休日の昼に誰かの手作り弁当が食べられるなんて、そんな嬉しいことは無い。男なのが惜しまれるが。
友人は俺が弁当箱を受け取ったのを確認すると、「それじゃ」と言って、早足で出ていく。滞在時間は一分にも満たない。雷騰雲奔な奴だ、なんて俺は思う。
果たして、彼の目的は何なのだろうか。どうして俺に毎週弁当を持ってくるのだろうか。どうしてそんなに急いで去っていくのだろう。俺は疑問に思う日々だった。
9:30 a.m.
〒○○○-○○○○
◾︎◾︎町◾︎丁目◾︎番◾︎◾︎号
△△ △△ 様
内容:唐揚げ弁当のご注文
備考:隣のアパート。毎週金曜日十時ぴったりに持って来いという要望。電話口の様子が変。配達員◾︎◾︎の事を自分の友人だと思い込んでいる節がある。
注意:成る可く滞在時間を短くするように。
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