洒洒落落
皆は営業部のAの家に行ったことがあるか?
そう、あの大きな一軒家だ。
俺が初めてAの家に行った時は、独りで住むには流石に広すぎると思った。
だから、俺は尋ねたんだ。
「なぁA。なんでこの家買ったんだ?」
「不動産業者に最初に進められたのがこの家だったからだよ」
「でも、大き過ぎやしないか?」
「広くて困ることは無いだろう」
Aは物事に頓着せず、人々が持ち得る拘りなどは無かった。流れるままに生きている。
俺はまた尋ねた。
「なぁA。この家、お前の他に誰か住んでるのか?」
「いいや、俺独りだよ」
「ペットは飼っているのか?」
「犬も猫も、何も飼ってないね」
「……じゃあ、さっきから聞こえる五月蝿い足音は誰の何だ?」
俺がAの家に入ってからずっと、この一軒家の二階の方からドタバタと駆け回る足音が聞こえるのだ。
「さぁ、僕も分からないね」
Aは気にも留めていないようで、優雅に紅茶を飲んでいる。
「なぁA。この足音、段々と近づいてきていないか?」
「まぁいいじゃないか、足音くらい」
足音が俺の真後ろまで迫って来た。Aはソファーに腰掛けたまま「この紅茶、いいでしょう」なんて世間話を始める。
Aには悪いが、俺は直ぐに逃げ帰ったよ。
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