臥薪嘗胆

 一週間後、俺とアイツは決闘する。


 先週は俺の負けだった。

 先々週も俺の負け。


 悔し涙を流した俺は、中学の授業で習った『臥薪嘗胆』を実行すれば、アイツに勝てるのではないかと思った。

 俺は早速薪を拾い集めて寝床を作り、嫌いな肝を舐めてアイツへの復讐心を高めた。


 ククク、次こそ勝ってやる……!


 当日、俺はアイツと向かい合う。

 薪の上で考えた作戦を実行する時が来た。


 行け! マタタビッ!


 フシャァアアと尻尾を立て、爪を尖らせて威嚇するアイツの目の前で、俺はマタタビを揺らす。


 アイツは段々と蕩けていき、フニャフニャとしっぽを揺らしてマタタビに夢中になっている。


 ククク、今なら……。


 俺はアイツのふさふさの背に手を伸ばす。

 あと1センチ。

 アイツは突然正気を取り戻して、勢い良く後ろに退いた。

 そしてニャアとひと鳴きして、アイツはくさむらに逃げていく。


 また負けた……ッ!

 薪の上で寝て、肝まで舐めたってのに!


 俺は修行が足りなかったのだと反省し、新たな薪を調達しに森へと足を向けた。

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